自営の食堂が消え、チェーン店だらけの日本が不幸でしかない理由

 

その反対に増殖しているのがチェーン店です。いかにもデジタルのプリンターから吐き出された「キャンペーンのノボリ」を立て、メニューはプラスチックのパウチのされた大量印刷、マニュアルにバカみたいに厳格な接客、セントラルキッチンで下処理された画一メニュー…そんな店と、それこそワンオペで回すような牛丼やカレー中心のスタンドのチェーン店…全国どこでも金太郎飴のように、チェーン店ばかりです。

そうした、チェーン店の現場には、なかなか希望が感じられません

どうしてなのでしょう?

まず、時給が安そうだということがミエミエです。本当に幸福そうに働いている人は少なく、もちろん良心的な経営をしている会社もあるわけですが、基本的に安い店の場合はやはり、違うと思います。

もう一つは、キャリアパスを閉ざされていることです。外食の現場で何年やっても、それは専門スキルとして個人の価値を高めることにはならないのです。まず、サービスにしても画一的で、マニュアルの逸脱は許されません。調理もそうで、下処理した食材をマニュアル通りに加熱したり盛り付けるだけです。

ですから、調理や接客について「独立できる」レベルの修行には全くならないのです。つまりチェーン店で長年働くということは、本当に労働力を切り売りしているだけであって、「その先は見えないのです。

同じようにワンオペで調理して接客していても、自営なら利益は全部自分のキャッシュフローになりますが、非正規労働だと時給で終わりです。仮にオーナーになるとしても、チェーンのフランチャイズに入ると、店から見たコストの構造は全く異なります。先ほどの昭和の屋台ラーメンとは全く違って、材料は全部指定のもので、既に本部が自分の利益を乗せています。利益からはフランチャイズ料を取られます。

では、チェーン店の場合は何に金がかかっているのかと言うと、本部の間接部門のコストです。つまり本部にいる「正規労働のホワイトカラーを養うためにカネが流れているわけです。本部は何に対して対価を得ているのかと言うと、工場のように標準化されたメニュー開発と、食材の調達、下処理、店舗設計、サービスマニュアルの実施などといった「ビジネス」をやり、その代わりに現場の非正規労働者よりは高い給料をもらっているわけです。

ユタ州で感じた一軒一軒に個性があり、それぞれ働く人は同時にオーナーとその家族であって、楽しそうに何十年もビジネスを続け、それなりのキャッシュフローを得ている、そんなビジネスモデルとは大きな違いがあります。

私は、どう考えてもこの種の小規模でも完結性があり、しっかり粗利の取れるビジネスは個人経営である方が、働く人もそして利用客にしても幸せになれるし希望が持てると思います。

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