忘れてはならない「日ロ悪化なら利するは中国」という不変の法則

 

丸山さんの発言の影響は?

この発言で、日本維新の会は丸山さんを除名しました。丸山さんの発言は、どんな影響があったのでしょうか?

まず、明らかに日ロ関係に悪影響です。安倍総理は昨年11月、シンガポールで、「日ソ共同宣言をベースに平和条約交渉を行う」と宣言しました。これは、これまで絶対視されていた「4島返還から2島返還への大きな転換であり譲歩でした。うまくいくかはともかく、安倍総理は、熱心に領土返還交渉」をしています。

そんなときに、丸山さんは、「でも、取り返せないですね。戦争しないとどうしようもなくないですか」という。「交渉してもどうせダメなので、戦争して取り戻そう」と。この発言について、ロシア側は

丸山議員発言、ロシア上院委員長が批判

 

ロシア上院のコサチョフ国際問題委員長は13日、北方領土へのビザなし交流に参加した日本維新の会の丸山穂高衆院議員が「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と元島民に発言したことは「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と述べ、批判した。モスクワで開催された日ロ知事会議の会場で記者団に述べた。コサチョフ氏は「そのような挑発的な発言ができるのは、存在する問題の解決を望まない人々だ」と語った。

(共同)

日ロ関係が悪化すると日本の国益になりません。こちらを、熟読してください。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

中国の戦略は、日米、日ロ、日韓関係を分断し、日本を孤立させ破滅させること。だから、日ロ関係が悪化すれば一番喜ぶのは習近平なのです。

もう一つ。「戦争をやって取り戻す発言は中国韓国のプロパガンダに力を与えてしまいます。中国の「反日プロパガンダ」、骨子は、

  • 日本は軍国主義化している
  • 日本は右傾化している
  • 日本で歴史修正主義が台頭している

です。そして、彼らは、その「証拠」として、

  • 総理の靖国参拝
  • アメリカ製日本憲法の改正
  • 総理の「歴史修正主義発言」(たとえば、「東京裁判は勝者の断罪」など)

などをあげていました。たとえば総理が靖国を参拝されたのは、2013年12月26日。その約2か月後の2014年2月19日、米ブルームバーグには、「日本のナショナリスト的愚行、米国は強い語調で叱責を」という社説が載りました。何が書いてあったのか?

バイデン米副大統領が事前に自制を求めていたにもかかわらず、安倍首相は靖国参拝を断行した。非公開の場でのこの対話の内容はその後、戦略的に漏えいされた。恐らく、安倍首相の尊大な態度を白日の下にさらすためだろう

安倍総理の尊大な態度」だそうです。

米国は反論すべきだ。それも通常より強い言葉で切り返すべきだ。4月のオバマ大統領のアジア訪問は、中国政府の外交的冒険主義を容認しないことをあらためて表明する良い機会であると同時に、安倍首相の挑発がアジアの安定を脅かし、日米同盟に害を及ぼしていることをはっきりと伝えるチャンスだ。
(同上)

安倍首相の挑発がアジアの安定を脅かし」だそうです。

日本が何十年もかけて築いてきた責任ある民主国家として受ける国際社会からの善意を、安倍首相は理由もなく損ないつつある。首相が自分でそれに気づかないのなら、米国そして日本国民が分からせてあげられるだろう
(同上)

これは、「靖国参拝に対するアメリカの反応です今回の話とは関係ないと思えるでしょうか?私がいいたいのは、以下のことです。

  • 日本は現在、ぴかぴかの自由民主主義国家であり、中韓は文句をいえない
  • そこで、「日本は過去、ひどい国で、今も本質的に変わっていない」とプロパガンダする
  • すると日本の愛国者が、「中韓のプロパガンダはウソだ!日本は、そんなにひどいことはしていない!」と反論する
  • 中韓は、「ほら日本は反省していない。彼らの本質は今も『軍国主義者』なのだ」と主張する

とまあ、こういうことになっているのです。たとえば、安倍総理の「東京裁判は勝者の断罪発言。これ、正直私も、「その通りじゃないか?」と思います。しかし、こういう発言は、東京裁判史観をつくったアメリカと日本の関係を破壊します。それで、喜ぶのは習近平。だから、日本の特に上のポジションにある方は、「東京裁判は勝者の断罪」とか、「侵略の定義はさだまっていない」とかいってはいけない。

丸山さんの発言、自民党も日本維新の会も、マスコミも皆非難しています。もしこれを非難しなければ、「なんだ日本にはこういう発言が許される土壌があるんだ。日本は、今はおとなしくしているが、やはり環境がかわれば何をするかわからない国だ」と考えることでしょう。だから、除名を決めた日本維新の会は、日本の国益を守ったのです。

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