なぜマスコミは衆参ダブル選挙が「行われる方向」で報道するのか

2019.05.21
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takano20190520
 

噂される今夏の衆参同日選を巡り、さまざまな報道を繰り広げるメディア各社。民主党結党において大きな枠割を担い、長く政界を分析し続けてきたジャーナリストの高野孟さんは、一連の流れや「衆院解散」についてどのような意見をお持ちなのでしょうか。メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』最新号に詳しく記されています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年5月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

大義も名分もない衆参同日選を囃し立てるマスコミの奇怪──この際「7条解散」の悪慣行を廃絶しよう!

「衆参同日選の可能性、高まる与野党双方の見方」(NHK 14日)、「憲法改正争点に、広がる衆参同日選の憶測」(産経新聞、16日)など、マスコミがこぞって同日選を煽るかのような報道を続けているのが奇怪である。いや、各メディアに言わせれば、与野党幹部がそれを口にするので“客観的に”報道しているだけなのだろうが、実際は各所の会見で「どうなんですか?」と水を向けているのは記者たちで、それで得た片言隻句を記事にして見出しを立てるから、政治家はまた翌日、何か言わなければならなくなる。

そりゃあ確かに同日選となれば、外交・内政・経済の何もかもが八方塞がりに陥っている安倍政権の一か八かの大ギャンブルで、一気に政権立て直しになるかもしれないし崩壊・退陣に突き進むかもしれない大騒動になる。そうなれば面白いと思って煽っているのだろうが、ここは一つ踏みとどまって「こんな馬鹿げた解散で政治を弄んで国民を惑わせるのは止めろ!」と安倍晋三首相に集中砲火を浴びせ、暴走に歯止めをかけるべきではないのだろうか。

改憲や消費増税延期がなぜ選挙のテーマなのか?

問題は2つあって、第1に、そもそも首相が「伝家の宝刀」とか言って自分の好きな時に衆議院を解散して政局を一新しようとすることが、憲法上正しいことなのかどうか。これは後で述べる。

第2に、仮に首相に解散権があるとしても、だからといって首相や与党の自己都合だけで何の制約も受けずに自由気ままにそれを発動していいわけがない

例えば、産経が言うように「憲法改正を争点にした同日選」というものがあったとして、これについて与野党はそれぞれ何を訴え有権者は何を判断して選択を下すのか。そもそも衆参両院の憲法審査会は昨秋の臨時国会から今年の通常国会も終盤近くなった今日まで、ろくに開かれておらず、安倍首相が一昨年5月に提示し自民党大会が昨年3月それを追認して「改憲条文イメージ」としてまとめた4項目をはじめとして、改憲の中身については、肝心の国会自身がまだ議論を始めていない

繰り返すが、仮に首相に解散権があるという前提に立っての話だけれども、改憲を争点にしてそれを発動するにはそれなりの必然性──国会で散々議論して論点も出尽くし、その過程で国民の間でも賛否両論、大いに議論が巻き起こって機運が熟してきたというのに、例えば野党が不当な抵抗をして発議に持ち込めずに膠着してしまったというような場合に、国会の中だけでは解決できない状況を打開するためにやむをえず国民に信を問うということはあるだろう。それならば、国民が広く納得して投票所に向かうような、それなりの大義名分が立つはずである。

ところが今の状況を野党や国民から見れば、安倍首相からまだキチンと説明を受けたこともない改憲案を争点として選挙で信を問うとか言われても、判断のしようもない。なのに、どうして産経のような見出しが立つのかと言うと、その記事によれば、5月16日の下村博文=自民党改正推進本部長・細田派事務総長の会見の際に「改憲論議が停滞している状況を打破する目的での同日選の可能性」を記者団から問われて、下村氏が「『(野党から)内閣不信任が出るなら受けて立つべきだという人がちらほら出てきている」と答えたからである。

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