なぜマスコミは衆参ダブル選挙が「行われる方向」で報道するのか

 

産経がデッチ上げた扇動的な見出し

注意して欲しいのだが、下村氏は改憲を争点とした同日選の可能性について何も言及していない。そういうものがありうるかのように質問して挑発したのは記者団である。ところが下村氏は挑発に乗らずに、内閣不信任案が出された場合に“69条解散がありうるとする人が党内にちらほら存在すると、改憲とは無関係の一般論を述べている。これが、無理に合成されて「憲法改正争点に広がる衆参同日選の憶測」という見出しが立つのである。記事中では、自民党の甘利明選対委員長が同日、改憲を争点とした衆院選について問われて「首相がその考えに現時点で同調しているとは、まだ私には思えない」と述べたとも記されている。つまりこの産経の見出しは世論誘導目的のほとんどデッチ上げなのである。

昨秋に憲法改正推進本部長に就いた途端に失言して野党の態度を硬化させてしまったのは下村氏自身で、その結果として憲法審査会がろくに開かれていないというのが「改憲論議が停滞している状況」なるものの実質である。それを打開するのは国会内で下村氏が何とかしなければならない問題で、それを国民に問うても仕方のないことである。だから、現時点で「改憲論議が停滞している状況を打破する目的での同日選の可能性」などどこにも存在していない

4月に萩生田光一=自民党幹事長代行が口にした、10月の消費増税再々延期の場合には「国民の了解を得るため信を問わなければならない」というのも、同様の虚偽の課題設定で、アベノミクス6年間の果てに景気「悪化」に直面しつつあるという惨憺たる経済状況について国会が徹底的に議論を深め、これを打破する方策を競い合っているのを刻々と国民が観ていて、その上で採取判断を委ねるならまだしも、国会は議論せずマスコミでもごく一部を除いて何も語っていないというのに信を問われても迷惑である。与党が消費増税をしようとしていることに野党の多くが反対していて、その与党が野党に同調して増税を先延ばしするというのであれば、そこには何の争点も形成されえない。有権者は増税が嫌に決まっているからそれを言い出した自民党に投票することになるという、これは一種の劣情に訴える詐術的なポピュリズムで、そのような総選挙を安倍首相はすでに2回も繰り返していて、まだ同じ手口を繰り返そうとしている。

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