マンション管理組合の理事長や実務を担う主要メンバーの高齢化が深刻な問題となっており、世代交代の緊急性も指摘され始めているようです。マンション管理士の廣田信子さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、高経年マンションで実際に起きた「管理組合理事長の急死」を、残された管理組合員がどのようにして乗り越え、且つ世代交代の道筋を作ったのかを紹介しています。
理事の急死が続いたことが管理組合を変えた
こんにちは!廣田信子です。
それは、突然やってきます。
あるマンションは、高齢の役員の方々がチームで管理組合運営を支えてきました。特に、10年ほど前からは、会社をリタイア─した60歳代後半の方々が中心で、改革に取り組んで力を発揮してきました。そのきっけかは、修繕積立金の大幅不足が判明したことだったといいます。
全員仲が良く、ツーカーで、もめ事もなく、飲み会もよくやっていた…と。同年代の管理員さんもいっしょになって、一人暮らしの高齢者の見守り活動もやっていました。
ですが…10年経つと、その中心メンバーも70歳代後半になります。80歳を超えた方もいます。昨年、大事件が起きました。1年の任期の間に、突然、2人の理事が続けて亡くなったのです。しかも、お一人は、そのメンバーの中では一番若い実務で一番たよりになった人だったのです。
ようやく、このチームで管理組合運営を続けるのは限界だということで、役員の定員を増やして、輪番制を取り入れることを総会に提案し、決議できたといいます。それを話してくれた理事さんは言います。
「考えないようにしてきたけど、70歳代後半になれば、自分も含めて、いつ何があるかわからないということを思い知った。やあ応えたよ。2人続けて役員が亡くなったという現状があったので、総会でも、反対意見がなく、規約改正も出来て、ほっとしている…。改めて、周りを見渡すと、ここ5年ぐらいで、けっこう若い人も入ってきているんだね。総会には出てこなくても。若い世帯を事情説明に回った時に、購入した理由を聞くと、このマンションは高経年でも、きちんと管理されているから…と言われて、うれしかったよ。自分たちが、定年退職後、頑張ってきたことは、きちんと評価されているんだと分かって。そのことを分かってくれている人たちなら大丈夫だから、あとは、順次、若い人たちに渡していこう…」
と。
定年退職後の時間をマンションをきちんと維持管理することに使い、まだ元気なうちに、次の世代に受け継ぐ体制を整えたこの方々はすごいですね。思わず、すばらしいですね…と私。そうすると、
「2人連続だよ。つい1か月前には元気でいた人が。あれがなければ、まだまだ自分たちが頑張らなくちゃ。若い人は忙しいし無関心だから…と勝手に思っていたと思うよ。気心が知れたチームで仕事をするのは、それなりにたのしかったし…。あの2人の遺言みたいな気がする…」
と。で、新たに輪番で理事になった人たちに、レクチャーをしなければと思っているが、どうすればいいかという相談でした。
これも、すばらしいですね。若い人のやり方に任せていくことは大事ですが、管理組合の歴史や、マンション管理の基本を知っていることが役員を務めるのに不可欠です。それがないと、ベテランの役員がいる中で、若い人が意見を言えませんから。こういう前向きな考え方を持っている管理組合に対しては、私も、ぜったいに、力になりたいと思いました。
元気なうちに、世代交代の道筋をつけることが、マンションを、管理組合を、長持ちさせるためのポイントになるのです。高経年マンションの世代交代を応援します!
image by: Shutterstock.com