【書評】「断捨離すべきナンバーワンは夫」という妻にかける言葉

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「断捨離」という言葉を考案し、商標登録している女性をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、そんな著者が夫婦関係について綴った一冊をレビューしています。

偏屈BOOK案内:やましたひでこ『断捨離したいナンバーワン、それは夫です』

51q5XIRvTYL「断捨離したいナンバーワン、それは夫です」
やましたひでこ 著/悟空出版

面妖なタイトルである。「断捨離したいナンバーワン、それは夫です」と「」がついているのは、わたし著者が言っているんじゃありませんよ第三者の言葉を用いているんですよというアリバイであろう。著者はヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離なる言葉を個人の登録商標としており、無断使用はできない。日用語になった言葉には権利者がいたのだ。

「断捨離したいナンバーワン、それは夫です」と言う妻が多いという。「誤解しないでください。断捨離とは、自分と、モノ・コト・ヒトの関係性を問い直すものであり、人を捨てようとすることではありません」と著者は書くが、私だってすぐ、この新語は、必ず夫婦関係で使われると解釈していた。著者ははじめから、結婚の制度と夫婦のかたちを続編にと、視野に入れていたはずだ。

「ところが残念なことに、私が世に問うた断捨離は、ひとり歩きを始め、私が伝えたいカタチでなく広まっていることがあります」って、よく言うよ。「さあ、不満を抱え、我慢を重ねる“妻と夫との関係こそ断捨離の対象です」と喜々として「はじめに」を結ぶ。また煽りたてるぞという

夫婦という重い荷物に疲れていませんか?制度に縛られない結婚のカタチ、自分の居場所を創る人・なくす人、断捨離で考えるこれからの夫婦のカタチ、今から始める夫婦関係の最適化、という章立て。なにを煽るのか、だいたい想像はつく。「断捨離に共感を得た妻たちをさらに理論武装させるだろう。

大事なところはゴシックで、というよくある安易さ。「お互いの価値観もピッタリ一致した夫婦であったとしても、それが将来に至るまで続くことはありえないでしょう」「繰り返しておきます。『結婚=同居=夫婦』という思い込みが、夫婦のあり方を窮屈に閉塞させていくのです」。キタ~ 予想通りだ。

著者に持ち込まれる相談は、惨憺たる家のありようと、そこで展開する夫婦の問題がセットになっている。「モノとの関係が良好でないのは、その住空間に『良好でない妻と夫の関係が横たわっている』という事実があり」「『家の中が整う』という結果が表面上は出せたとしても、そのじつ、波乱含みの妻と夫の、相手への不満はヘドロとして堆積していることには変わりがないのです」

著者がつくづく思うことは「幸せな結婚はある けれど、幸せな結婚生活は少ない」だという。「断捨離とは関係性の問い直し 断捨離とはモノとの関係性の入れ替え」といわれてもなあ。「左脳で論理的に考えるのではなく、右脳で自分の心が欲しているかどうかを基準にするほうがいい」といわれてもなあ。

結婚40年、60代になった著者と夫。夫ジュンちゃんが「もったいない派」であったら、間違いなく我慢も辛抱もできなかったはずだという。夫は石川県に、著者は東京に住み、さいきん二人で那覇に引っ越し、3拠点を有するお金持ち。いまの生活、人生がいっぱいの「快」に満たされた幸せな人だと思う。それにしても、断捨離という使い勝手のいい言葉にはかなりの悪意が含まれると感じるのはわたしだけか。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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