朱子学・孫氏の兵法・貞観政要など、2,000~3,000年前もの昔に中国の先人が遺した言葉の数々は、現代の経営者にも語りかけてきます。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、中国古典より抜粋した、経営者のありかた・経営戦略の観点などから「なるほど」と思わせる6つの言葉を紹介しています。
中国古典の言葉に学ぶ
まず、経営につながるような言葉を二つ紹介します。
大道は多岐なるを以(もっ)て羊を亡(うしな)う
「朝三暮四」や「疑心暗鬼」の出典ともなった、中国春秋戦国時代の道教思想『列子』にある言葉です。大きな道には分岐点が多いので、羊の姿を見失ってしまう、という意味です。「多岐亡羊」とか「亡羊の嘆」という言葉のもとにもなっています。つまり、人生には分かれ道がたくさんあるので、ついつい目標とは違うところに迷い込んでしまう。気をつけよう、という戒めを説いています。
経営も同じですね。事業の調子が悪くなって、対策を打つ必要があるとき、さまざまな選択肢があります。その時に重要なのが「目標」です。どんな企業になりたいのか、どんな役目を果たしたいのかという「目標」が明確ならば方向を迷うことはありません。
険を見て能(よ)く止(とど)まるは知なるかな
孔子が儒教の教科書とした書のうちの一つ『易経』にある言葉です。3,500年前に出来たといわれます。この言葉の意味は、「危険を察知したら進むのを見合わせて立ち止まる、それが知者である」ということです。
また、「知者」とは、物知りのことではなく、適切な判断の出来る人をさします。以前に起きた三菱自動車のデータ不正問題も、「止まら」なかったことが原因です。データの不正が表に出れば、当然会社に危険が及びます。データの不正を止められなかったのは、本当の意味での勇気が足りなかったからでしょう。企業に「知者」がいなかった、ということです。
経営者に関する言葉
次は、経営者の心構えに関する言葉です。
流水の清濁はその源に在り
唐の時代の政治論『貞観政要』にある太宗の言葉です。「君主がでたらめなことをしているのに、臣下にまっとうなことを期待するのは、ちょうど濁った源をそのままにしておいて、流水の澄むことを望むようなものだ」と、政治のリーダーや経営者の心構えを説いています。
かつてカルロス・ゴーン氏が日産を立て直してV字回復させましたが、このころのゴーン氏は「澄んだ源」であったからでしょう。シャープが鴻海に買収されて立ち直ったのも、その経営トップの姿勢によって、濁った水が清流になったということなのかもしれません。
人に接しては則(すなわ)ち渾(すべ)てこれ一団の和気
宋の時代に書かれた朱子学の入門書『近思録』にある言葉です。私の周りには温かさを感じさせる人物が多くいます。それが「和気」です。ここでは、人には温かさをもって接しなさい、ということを説いています。その方が圧倒的に人に好かれるからです。
そして「和気」ある人には人が寄ってきます。ですから、経営者はいつも難しい顔ばかりをしていてはダメだということです。私自身を振り返ってみて、おおいに反省させられますね。
しかし、少なくとも周りに「和気」を持った人がいることは幸いです。彼らと一緒にいれば、多少の影響を受けることができるでしょうから。