ヒット商品を出すのは小手先ではできない
では、私たちはキリンビールの事例から、何を学ぶべきでしょうか?
ヒット商品を出すには、固定観念や、過去の成功体験にとらわれないことが重要です。しかし、この2つからの脱却こそが一番難しいのも事実です。多くの企業が、苦しんでいるのもよくわかります。
企業の文化や風土は、社員の「心の中」にあるものなので、一朝一夕で変えることができません。「明日から変えようね」と、社員全員に通達しても、すぐに変わるのは難しいのです。
先ほど、大企業病といいましたが、大企業病は「大企業だけがかかる病い」ではありません。どんな企業でもかか可能性がある病気なのです。思考が硬直してしまう大企業病は、中堅企業、中小企業はもちろん、企業の中に存在する事業部や、運営する店舗にも見受けられます。
この本麒麟のヒットは、キリン社内での「人」の変革から生まれたと言えます。一番変えにくい人そのもの、そして人の意識は、何によって変えることができるのでしょうか?それは、組織のトップである社長です。組織のメンタリティを変えるには、トップが変わらなければなりません。上に立つ人、すなわち社長や店長が変わらないと、社員は変わらないのです。
次のステップとして、キリンの山形氏のようなプロのリーダーが、経営者の思いを、経営者のサポートを受けつつ、組織に浸透させることが必要です。
もう1点、このキリンの事例から学ぶことができるのは、顧客視点に立ったことです。物と情報が溢れている今、顧客が欲しいものは無い、と言っても過言でないくらいです。そんな中で選ばれ、買ってもらうには、顧客が今欲しいものとわかっているものを、提供していてはいけません。
提供すべきは、顧客が今は知らないけれど、教えてもらったら欲しくなる、潜在的なニーズを提供しなければなりません。顧客は、会社の都合などどうでもよく、自分の欲求を満たしてくれるものを選びます。
顧客の一歩先を読み取らなければ潜在的なニーズを見つけ出し、提供できません。そのためには、常に顧客を観察し、顧客満足を超えた、顧客歓喜を探す工夫が必要です。
簡単なことではありませんが、キリンのような大企業はもちろん、中小企業の経営者やお店の店長さんに至るまで、マネジメントをする人は、
- 「うちの会社はお客さま本位になっているか」
- 「うちの会社目線になっていないか」
- 「自由に発言できる環境にあるか」
と自問自答することで、まずは、自社の企業文化が顧客視点に立っているか、をチェックすることから始めるといいでしょう。
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