絶望のニッポン経済。増税前でも「駆け込み需要なし」の深刻度

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いよいよ10月1日に迫った消費増税ですが、今回は「駆け込み需要の弱さ」が指摘されています。そこには一般消費者のどのような心理が働いているのでしょうか。米国在住の作家・冷泉彰彦さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、「多くの人々の心の奥底に諦めのムードがある」と分析した上で、そんな状況に至らしめた根本原因を考察しています。

消費増税、駆け込み需要のエネルギーもない事態をどうする?

2014年4月、消費税率が5%から8%に上がった際には、その直前に猛烈な駆け込み需要がありました。この時は、税率アップの1ヶ月半前から消費者の購買金額が上昇して行き、直前になると「前年比40%増」といった数字になったのです。ところが、増税後はその反動で「前年比10%以上ダウン」という傾向が続いて、消費低迷が長期化してしまいました。

今回は、10月1日から増税ですから、もう1ヶ月前に入ってきているわけです。ですが、報道によれば駆け込み需要はそれほど起きていないのだそうです。例えば、前回大きな「買いだめ」が発生した、日用品雑貨、紙製品(トイレットペーパーなど)については、各小売チェーンは仕入れを拡大しているのですが、動きが鈍いようなのです。

この問題ですが、前回とは条件が異なるということがあり、複数の要素が指摘されています。1つは、キャッシュバックがあるので事実上は増税にならないという理解が広がっているということです。大手スーパーはダメですが、コンビニや個人商店では可能で2%の増税分がポイント還元されることになります。

ドラッグストアの業態は対象外のようですが、10月1日から独自にポイント還元を行う可能性があります。つまり、事実上は増税先送りになっているということで、消費者は駆け込みで買いだめをする必要がないという考え方です。

もう1つは、年金不安、給与総額低迷、米中通商戦争など、公私にわたる先行き不安のために消費が鈍っているという考え方です。こうした声は、かなり広がっているようで「10月から消費税がアップするので、その前から財布のヒモを締める」というような意見もあります。

外食産業の奥は危機感を持っているようで、単純に「8%から10%」への増税を価格転嫁してしまうと、消費が冷え込むとして既に商品の値下げが始まっています。

それにしても、この「駆け込み需要も弱い」という現状はどう考えたらいいのでしょう?

よく言われるのが「年金不安」という解説です。確かに「年金以外に2,000万円の貯金が必要」と言われれば、財布のヒモを固くしようと思うのは自然な心理です。

これに加えて、10月からは多くの例外はあるものの物価として「2%のアップ」になるのであれば、以降は実質的な購買力が減るわけですから、今から節約しておこうという心理もわかります。

ですが、問題は多くの人々の心理の奥底に「もう経済は成長しないだろうという諦めのムードがあることです。

その背景には、日本の産業構造に対するイメージの問題があるように思います。

「日本は金もないし、半導体やディスプレイなどでナンバーワンの座を取り返すのは難しいだろう」

「スマホなどの世界の消費者心理を掴んで、各国キャリアとの複雑な契約の中でやる商売はもう日本では無理」

「ソフトウェアについては、日本では長い間社会的地位を与えてこなかったので競争力などゼロに等しく、今更無理」

「航空機のビジネスも、日本には技術がそんなに残っていないし資金もないので無理」

「食料品や飲料も、人口減の日本を嫌って海外へM&Aかけたが結局は失敗例ばかり」

「リスク取れるお金がそもそもないし、英語が普及していない日本では金融立国は無理」

「事故の結果、日本人は心の底から原発が嫌いというのが分かったので、原子力の平和利用も絶対無理」

「遺伝子組み換えだけでも強烈なアレルギーがあるので、バイオ先端産業は無理」

「治験への抵抗感や規制があるので、医薬品開発も無理」

「頼みの綱は自動車だが、AIや電気自動車は他国の方が得意なのでやがて衰退は不可避」

「稼ぎ頭は部品産業と、B2B産業だが、結局はそれも特許が切れたら終わり」

もういいでしょう。こうした「敗北主義が徹底的に日本経済を侵食しているのではないかと思うのです。

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