総務省・有識者会議「駆け込み乱売はけしからん」――駆け込み需要を煽る仕組みを作ったのを忘れてしまったのか
総務省は8月29日、モバイル市場の競争環境に関する研究会とICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWGの合同会合を開催した。10月1日に施行される改正電気通信事業法を受けて、4キャリアから改正法への取組状況や課題などがヒアリングされた。
NTTドコモは施行に向けた課題として「駆け込み乱売」「既往契約」「継続利用特典」の3点をあげていた。「駆け込み乱売」については、他社が現在、駆け込み需要を狙ったキャッシュバックなどを乱発し、2年縛りもしくは4年縛りでユーザーを囲い込んでいると指摘。さらに「既往契約」が適用されることで、市場の流動性が高まるのが2年後もしくは4年後に先送りになると警鐘を鳴らしていた。有識者からも「駆け込み需要を煽るのはけしからん」という声が上がっていた。
ただ、ユーザーの立場からすれば、10月から割引が2万円しか適用されないのであれば、9月末までに買っておこうという心理になるのは当然だ。さらに、駆け込み需要を逃すまいとするショップの立場も理解できる。10月から端末が高くなる仕組みを有識者会議で勝手に作っておいて、「駆け込み需要はけしからん」と言い出すのは筋違いではないだろうか。
もうひとつ、NTTドコモは、新料金プランの「ギガホ」で、当初「ネット使い放題」としていたが、消費者庁から優良誤認表示として指導を受けたことを明かした。それならば、KDDIの「データ容量上限なし」やソフトバンク「動画SNS放題」も問題があり、「放題」という言葉について適正化をすべきではないかと語っていた。
そもそも、もうすぐ5Gのプレサービスを始め、さらにすでに4Gで1Gbpsを超える理論値を表示しているNTTドコモが、1Mbps程度の通信速度で「ネット使い放題」とアピールするほうが恥ずかしいと思わないのか。
もちろん、テザリング2GBという制限をつけるくせに「データ容量上限なし」というKDDIもどうかと思うし、特定のサービスしか対応しない「動画SNS放題」も、優良誤認であることは間違いない。
総務省の有識者会議は、有識者が頓珍漢なことしか言わないし、キャリアたちもお互いの足を引っ張ることしかしていない。有識者会議を傍聴するたびに、この国の通信の未来に何の希望も抱けないと失望して帰るしかないのだった。
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