台湾を裏切り中国を選んだソロモン諸島が陥る「債務の罠」

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習近平政権による台湾への「嫌がらせ」行為が止まりません。16日には中国から巨額の援助をちらつかされたソロモン諸島が、台湾との断交、中国との国交樹立を決定しました。これまでも同様のケースは相次ぎましたが、中国に転んだ小国に待つのは「債務の罠」しかないとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、これまで中国に嵌められてきた国々そとの惨状を紹介。さらに「台湾重視」を強めるアメリカの政策を記すとともに、日本で法制化が求められている「日台交流基本法」についても紹介しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年9月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】台湾と断交したソロモンが陥る「債務の罠」

台湾、ソロモンと断交 国交国16カ国に 呉外相「極めて遺憾」

ソロモン諸島が台湾と断交し、中国と国交を結ぶと宣言しました。各報道にもありますが、これで蔡英文政権になってから台湾と断交した国は6か国目です。以下、報道を一部引用します。

中華民国は1983年にソロモン諸島と国交を樹立。ソロモンは台湾が外交関係を有する太平洋の国のうち、面積(2万8,450平方キロメートル)、人口(約60万人)ともに最大だった。残る太平洋の国交国はキリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの5カ国。

これで台湾と外交関係のある国は16か国となりました。蔡英文総統は、このことに関して以下のような声明を出しています。

蔡総統は、中国の介入や圧力を前に「台湾は決して脅しに乗らない」と強調。「中国の金銭外交とは張り合わない」とし、台湾がソロモンに提供した医療や農業、教育、文化などの分野における援助は「金銭で計れるものではない」と述べた。

ソロモン断交 蔡英文総統、中国を「最も厳正に非難」/台湾

中国は、香港の騒動が台湾人に一国二制度は恐ろしいものだという印象を与えたと焦っています。そして、その影響は2020年の台湾総統選挙で蔡英文を有利に導くのではないかとの危機感を持っています。そこで、あの手この手で蔡英文政権への嫌がらせを加速しています。

外交関係にある国々を金銭外交で台湾からむしり取っていくのも、中国の常套手段のひとつです。ソロモン諸島が中国の手に落ちたことで、台湾の呉外交部長は「日米豪のインド太平洋戦略は『大きな衝撃を受ける』と警鐘を鳴らした」ということです。

香港での反中デモが世界中で報道されている一方で、ソロモン諸島が中国になびき台湾と断交したことは、民主主義や自由よりも中国の援助のほうが重要という姿勢を示したともいえ、中国にとっては、現在でも自分たちを理解し応援してくれる国が増えているとアピールすることにもなり、香港問題で低下した中国への国際的イメージを上げまた台湾の蔡英文政権や民衆に圧力をかけることにもつながります。

確かに、報道によれば融資額は「台湾の今年の援助額が850万ドル約9億2,000万円)なのに対し、中国は断交の見返りに、期間は不明だが5億ドル約540億円)の提供を申し出たとの情報もある」と、大きく違います。しかし、呉外交部長は、中国の融資について以下のように述べています。産経新聞からの報道を引用します。

「中国は過去にも台湾の国交国を奪うため同様の約束をしたが、実行には大きな差がある」と主張。サントメ・プリンシペに6億ドルの港湾、ブルキナファソに10億ドルの高速道路・鉄道建設を約束した例を挙げ『着工すらされていない」と断じた。また、中国の援助国が「債務のわな」に陥っている実態も列挙した。

台湾、ソロモン「断交」を警戒 呉外交部長が中国の軍港計画指摘

その一例がスリランカのハンバントタ港です。ここは、2010年親中派のラジャパクサ前政権が中国から大量の融資を受けて、「商業的な港」として開発されました。しかし、フタを開けてみれば、中国の軍港を建設された上に、高い金利を支払えないスリランカ政府から港の運営権を取り上げた事実上の売却状態。港の建設で現地の経済が潤うとの人々の期待も裏切り、雇用されたのは中国人労働者ばかり。現地の人の雇用は増えませんでした。もちろん現地の人々も黙っていませんが、いくらストライキや集会をしても中国側に無視されるか握りつぶされるかのどちらかです。

中国に運営権「植民地同然」スリランカのハンバントタ港 融資→多額の債務→99年間貸与

中国の金銭外交に乗った小国は、結局は中国の軍事拠点として利用されるだけなのです。中国からの多額の融資は、経済を潤すどころか、高い金利が加算され経済を圧迫し国民を苦しめるだけです。しかし、中国に取り込まれた一部の政治家は、国益よりも私利私欲に走り、中国の要求を呑んでしまう。これも、人の弱味につけこむ陰謀に長けた中国の狡猾さが功を奏しているのでしょう。

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