台風15号被害で森田健作知事「誰が悪いわけではない」の無責任

reizei20190924
 

9月9日未明に上陸した台風15号により、甚大な被害を受けた千葉県。停電、断水の復旧に時間を要し、熱中症や家屋修繕中の事故などの二次被害も多く報告されています。このような状況を「危機管理の失敗」と一刀両断するのは、米国在住の作家、冷泉彰彦さん。冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、今回の強風被害では「制度の誤り」が露呈したとし、二度と同じことが起きぬようその設計思想を徹底的に検証すべしと記しています。

台風15号の二次災害は危機管理の失敗

今回の台風15号における千葉県の暴風被害については、被災から2週間を経てもまだ一部地域で停電が続いていますし、多くの家屋ではブルーシートで雨水の侵入を防いでいるわけです。そのブルーシートにしても、今度は台風17号の強風で吹き飛んでしまったところが多いと聞くと、胸のつぶれる思いがします。

またブルーシートを張る作業に関しても、現時点ではようやく技術のある職人やその補助のボランティアなどの活動が本格化していますが、被災直後の状況では、住人が屋根に登って慣れない作業をする中で、転落事故が100件以上死者も報道されている限りでは3名出ているということで、こちらも厳しい状況です。

驚くべきは、恐らくは1万5,000軒以上の住宅が激しく損壊しているにも関わらず、県から国への激甚災害指定の要望が行われたのが9月18日であり被災から9日つまり1週間以上経過しているということです。

その他にも、停電からの復旧見込みについて東電が甘い見通しを発表していたとか、千葉県が備蓄していた発電機が使われずに眠っていただけだとか、巨大なゴルフ場の鉄柱が倒壊して多くの住宅を押しつぶそうとしているのに行政が動けないとか、様々な問題が報告されています。

それ以上に、現時点では回復してはいるものの、停電して地上電話と携帯電話が不通となると、その地域はあらゆる情報から隔絶するだけでなく、情報発信ができなくなるので地域が被災して住民が大変な苦痛を強いられているにも関わらず報道もされないし行政も動かないという現象が起きました。これは大変な問題であったと思います。

誰が悪いのでしょうか?

例えば、千葉県の森田健作知事の責任を問う声があります。確かに今回の台風15号では、千葉県庁の対応スピードについては鈍い印象があります。また、知事自身が「誰が悪いわけではない」というような発言をしており、自分と身内をかばっているとも受け取れるようなこの発言で印象が悪化しているのも事実です。

ですが、森田知事が悪いということはできないと思います。森田知事といえば、役者出身のタレント政治家でしたから、こうした有事にあたっては「俺が責任を取るから、ルールの縛りを超えて思い切って被災者を救って欲しい」などと絶叫して、自らワイシャツの袖をたくし上げて被災地に突っ走るイメージがあり、そのイメージを裏切っているのは事実です。

ですが、そのイメージと「中の人」はまた別です。またご本人も、昔のファンも年齢を重ねたこともあり、そのような「俺は男だ」式のリーダーシップは無理ということで諦めるしかないと思います。この点で知事を責めるのは酷です。

一方で、実はこの「誰が悪いわけではない」という発言には続きがあります。こちらの方は大問題であり、見過ごせないものがあります。それは「これが何が悪いわけでもない」というものです。

正確に報道内容を確認しますと、例えば読売電子版によれば、この発言は、被災後9日経ってからの9月18日に、知事が「自民党の県選出国会議員らと首相官邸を訪れ、安倍首相に対し、激甚災害の早期指定を要請」した後で、記者団に対して語ったセリフのようです。

その文言ですが、「(総理からは)非常に前向きな話を頂いた」と語った後で、国や県東電などの対応に批判が出ていることに関して、「混乱したことは事実で、混乱の中で色々な問題が出てきた。誰が悪いこれが悪いではない」と言ったというのです、読売の表現によれば、「強調した」となっています。

冗談ではありません。絶対に何かが悪いのです。21世紀の日本で台風の強風被害があったからといって、1週間も2週間も電気が来ない、水道が止まった、電話も携帯も通じない、止むに止まれず屋根に登って作業していた人が100人以上転落して、少なくとも3名が死亡した、その他にも熱中症死など二次災害が相次いだ…というのは「悪い」のです。あってはならないことです。

ハッキリ言えば、危機管理に失敗したのです。

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