そのように、類義語のバリエーションを増やす意識は持ちつつも、もっと簡単に導入できて語彙を増やせるのは、擬音擬態語を使う表現法です。
コンサートが「ノリノリで」良かった。庭のひまわりの丈が「ぐんぐん」伸びた。料理が「アツアツで」おいしかった。例文はありきたりですけど、擬音擬態語を使うというのは、こういうことです。
当メルマガの過去記事で、擬音擬態語の使い方について、詳しく解説しましたので、ここでは、簡単にとどめておきますが、擬音擬態語の利点は、そのものごとの状態を、感覚的に表現できて、発想しやすいうえに、全く新しい擬音擬態語を創造してしまってもOKで、なおかつ、擬音擬態語が含んでいる情報量が多い、ということです。
擬音擬態語を多く使う人は、印象としては、ちょっとお調子者っぽいかもしれませんが、淀みなく、立て板に水でおしゃべりできて、明朗で人気者。なぜそうなるかというと、擬音擬態語を使ってしまえば、あらゆるシーンで、表現に迷いなく、感覚的に、瞬時に、ダイレクトに、言語化することができるからです。
表現力の乏しさに悩む人にとっては、まさに救世主的な存在と言えるかもしれませんね。ただし、野球選手の話のように、シュッと来たところをバーンと打つ、みたいな、抽象的な言い回しになりがちで、説得力に欠くこともありますから、時と場所を選んで使うことも必要だと思います。
また、度合いを表現する方法としては、「(まるで)〇〇ぐらい」「〇〇ほど」「〇〇ような」…など、比較や比喩を用いるのも、極めて有効です。
夢かと思うぐらい、おいしかった子供のころに食べた記憶よりも、おいしかった…など、擬音擬態語と同様に、自由、勝手に創造することが可能で、比較したり喩えたりする言葉次第で、面白くも、格調高くも、いかようにも、性格付けすることが可能です。
比較・比喩についても、詳細に解説してありますので、まぐまぐサイトから過去記事をご覧ください。
…とここまでお話ししてきて、強調や類義語、擬音擬態語や比較・喩えなどを使えば、言葉のバリエーションが増えるということは、個々にご理解いただけたと思います。
いっぽうで、なーんだ、そんなことかとお感じになられた方に。この記事の始めに、話す時の語彙力(表現する能力)をつけるためには、もっと良い表現、最適な表現、しっくりくる表現を、付け加えたり、言い直したりする習慣、が大事なのだと言いましたよね。
つまり、こういった言葉選びを、その表現の時に、重ね、深めることなのです。最初は、庭のひまわりの丈が「すごく」伸びた、とだけしか言えなかったとして、その「すごく」とは、どのぐらいの度合いなのだろうと、もっと最適な表現を模索していきます。
次の瞬間、庭のひまわりの丈が、それはもうグングン伸びましたよ(擬態語)。まるで、小学生の男子の夏休みみたいに(比喩)。あっという間に、私の身長を抜くぐらいまで(比較)。
とこのように、付け加えたり、言い直したりしながら、そのものごとの度合いを言い表す表現を、深めていく。そういう話し方を習慣化することです。
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