ヨーカ堂やイオンリテールなどGMSは苦境に立たされているが、その根底には「価格の高さ」がある。
衣料と住居の分野ではユニクロやニトリといったSPA(製造小売り)を中心とした専門店が低価格を武器に台頭した結果、GMS各社の衣料と住居の商品は割高感が出るようになった。食品分野では競合の食品スーパーやディスカウントストアで食品を低価格で販売するところが台頭しており、こちらもGMS各社に割高感が出てきている。
食品スーパーでは例えば首都圏で店舗展開している「オーケーストア」が圧倒的な低価格を武器に勢力を伸ばしている。商品数を絞り込んで大量に仕入れることで仕入れコストを抑えたほか、刺し身パックにはツマを入れなかったり、弁当やサラダなどにはしょうゆやドレッシングなどを付けず別売りにするなどして不要なコストを省き、低価格を実現している。
運営会社のオーケーの業績は好調だ。19年3月期決算は、営業収益が前期比10.2%増の3,942億円、営業利益は27.8%増の183億円だった。営業利益率は4.7%にも上る。純利益は28.2%増の131億円だった。大幅な増収増益で好業績が続いている。
神戸物産が展開する「業務スーパー」も低価格を武器に成長している。輸入食品やプライベートブランド(PB)の食品を豊富に扱っているが、輸入食品は世界各国から直輸入し、PB商品は国内の自社グループ工場で製造するなどしてコストを削減し、低価格を実現している。また、ナショナルブランド商品は卸を通さずにメーカーから直接仕入れることで中間業者にかかるコストを削減し、こちらも低価格だ。
神戸物産も業績は好調だ。18年10月期決算は、売上高が前期比6.2%増の2,671億円、営業利益は7.6%増の157億円だった。営業利益率は5.9%にもなる。純利益は24.2%増の103億円だった。神戸物産も増収増益と好調だ。
オーケーストアや業務スーパーの他にも、「ロピア」「トライアル」「ベイシア」「アコレ」「ビッグ・エー」といった低価格のスーパー・ディスカウントストアが全国各地で台頭しており、ヨーカ堂やイオンリテールは厳しい戦いを余儀なくされている。
ヨーカ堂やイオンリテールが今後成長を果たすには、店舗の魅力を高めたり、付加価値の高い商品を開発することが必要だが、低価格を武器とする競合に対抗するためにも、低価格販売に耐えられるだけのローコスト運営がより一層求められるだろう。いずれにせよリストラや構造改革は待ったなしの状況だ。この1、2年が勝負所となりそうで、両社の行方に注目が集まる。
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