さて、本来63歳から貰うのを61歳から貰うようにしましたよね。ですが、この男性はまだ在職中です。という事は月給与と年金額によっては年金の停止がかかる在職老齢年金が適用される。年金は停止されるのか。まず、老齢基礎年金は停止の対象外なので、老齢厚生年金のみが停止の対象。
老齢厚生年金(報酬比例部分437,120円+差額加算12,000円)=449,120円(月額37,426円)。
この37,426円と、月給与(標準報酬月額)32万円と年間の賞与の合計120万円を直近1年で割って月換算した額10万円で判定する。なお、標準報酬月額32万円と月換算した賞与10万円の合計を総報酬月額相当額という。
- 年金停止額→{(総報酬月額相当額42万円+年金月額37,426円-停止基準額28万円)÷2}=88,713円の停止。年間88,713円×12ヵ月=1,064,556円の停止額
つまり、老齢厚生年金(報酬比例部分437,120円+差額加算12,000円)<停止額1,064,556円なので、支給される老齢厚生年金は無い。
差額加算は本来は停止の対象にはならないですが、65歳未満に繰り上げで支給される場合は停止対象となる。61歳から63歳まで支給される年金は老齢基礎年金456,000円(月額38,000円)のみ。
さて、65歳まで働くつもりだったが、62歳で懲戒解雇される事になった(年金が停止される失業手当はこの記事では考慮してません。なお、懲戒解雇だと会社都合にはならず、自己都合の場合と同じく失業手当の3ヶ月給付制限がかかる)。
62歳(令和2年10月)からは厚生年金から外れて翌月11月分の年金から停止額は無くなる。令和2年11月分から、老齢厚生年金(報酬比例部分437,120円+差額加算12,000円)+老齢基礎年金456,000円=905,120円(月額75,426円)に戻る。
ところで、61歳から62歳までの12ヶ月間は月給与32万円と年2回の賞与合計120万円貰いましたよね。この12ヶ月分再計算されて年金が増える事になる。普通は退職月の翌月から年金額が変更(退職時改定)されるが、この男性は元々の本来の年金支給開始年齢が63歳なので、63歳で変更される。
- 61歳から62歳までの平均標準報酬額→(32万円×12ヵ月+60万円×2回)÷12ヵ月=42万円
増える年金額は、平均標準報酬額42万円×5.481÷1,000×12ヵ月=27,624円。
よって、63歳からの年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分437,120円+27,624円+差額加算12,000円)+老齢基礎年金456,000円=932,744円(月額77,728円)。
じゃあ、65歳になると年金は増えるのかというと、配偶者加給年金390,100円と差額加算が増える。
- 差額加算→12,000円+1,626円(令和元年度定額単価)×12ヵ月(61歳から62歳までの)=31,512円
よって、65歳時点の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分437,120円+27,624円+差額加算31,512円)+配偶者加給年金390,100円+老齢基礎年金456,000円=1,342,356円(月額111,863円)。
※ 補足
配偶者加給年金は繰り上げて年金を貰っても、本来の65歳からの支給となり、減額もされない。
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