GSOMIA破棄が世論の大半を占めていたとの数値が出ていますが、それに反する決定を下したことに、自分たちの判断をないがしろにされた!と怒る国民や、「何かアメリカか日本と取引したのではないか」との反政権勢力からの勘繰りがマッチして文大統領おろしや青瓦台の幹部や政権の閣僚への攻撃が日に日に増しており、聞くところによると、「これまでに例を見ないほどのレベル」とのこと。
とはいえ、クーデターの兆候が噂される段階で、すでに実行の可能性は低いと思うのが常なのですが、レーダー照射問題以降、軍部は大統領府から蔑ろにされているとの不満を募らせているようですし、対日・対米で矢面に立ってきた外交部長官も、自分を蚊帳の外に置こうとする青瓦台の姿勢に、嫌気がさしており、反撃の機会をうかがっているとのこと(そして、面白いことに彼女を次の大統領候補に担ぎ出そうとの動きもあると聞いています)ですので、これまで以上に現実味を帯びてきたようにも思えます。
この話題で興味深いのは、金正恩体制に対するクーデターの噂です。表に出た段階で徹底的に情報源を探し出し、見せしめのように残忍に処罰することで騒ぎを収めようとするでしょうが、先代以上に対米強硬路線を強める姿勢を取ったかと思えば、突然、トランプ大統領との個人的な友情を讃えて、アメリカとの融和の雰囲気を醸し出すという、北朝鮮内部でも予想不可能な動きの変化に、軍部も党も振り回され、不条理に粛清される状況に、統制の乱れが目立ちだしたとのうわさも出てきました。
そして、より気になるのが、何ら成果は期待されないにもかかわらず、最近になって、やたら北朝鮮内部で金正恩氏とトランプ大統領の再会談や、北京や極東ロシアへの訪問、そして実現可能性ゼロとまでこき下ろされたソウル訪問の“可能性”が提案されているようです。
単に外交的な動きと見ることも可能ですが、これまで安易な外国訪問を控えるように進言してきた周辺が、気持ち悪いくらい、金正恩氏を平壌から引きはがそうとしているようにも思われます。軍とお付きの数が国内よりは少なくなりがちな国外で、何らかの計画が練られているのかもしれません。かりにクーデターが実行されてしまうと、確実に体制の存続基盤は弱体化し、結果的に北朝鮮の存在もなくなる危険性があります。
「GSOMIAがなくなることで、韓国は中国とロシア、そして北朝鮮を利するつもりか!」そう、エスパー国防長官は文大統領を一喝したらしいと聞いていますが、今回のGSOMIAのキャンセル騒ぎは、もしかしたら、韓国の文大統領にとっては、強烈なブローとなり、辞任どころか、クーデターによって排除される道を作ったかもしれませんし、“利する”はずだった北朝鮮も、このまま対米・対日威嚇や瀬戸際外交を継続し、軍部や国民の生活を今以上に苦境に陥れるような事態になれば、金王朝が終焉し、北朝鮮のraison d’etreも無くなり、大きな力の空白が今後、朝鮮半島に生まれる可能性が予見されるようになってきました。
もし、このような恐怖のシナリオが現実化したら、どのような安全保障環境が我が国日本を取り巻くのでしょうか。今、北東アジア、そして日本を取り巻く安全保障環境は、おそらく大きな転換期に来ているものと思われます。