不透明支出で「組合私物化」のマンション理事長を解任させる方法

 

そもそも、理事、一般の組合員の多くが、積極的かどうかは別にして、形の上では、今の理事長を承認しているのです。ですから、総会で繰り返し選任され、その都度、理事会で理事長に選任されてきたのです。ということは、理事長本人はもちろん、多くの組合員は解任請求に賛成しないということです。

解任請求を承認していない人に、費用請求はできません。第2項は、あくまで各区分所有者に認められた権利なのです。

もちろん、「よくやってくれました。私も、実は、総会では言えなかったけど、理事長の解任に賛成だったのです」と言って、裁判費用の分担を承認してくれる人がいれば、その人たちに分担してもらうことは可能ですが、最悪、誰もそうは言ってくれない可能性もあります。不正行為を行っている理事長を解任して、管理組合を正常化したのに、あくまで、掛った費用は個人の負担というのは、納得がいかないようです。

これに関しては、東京地方裁判所の平成28年10月13日判決を原審とする東京高裁の平成29年4月19日判決があります。マンションNPOの解説が分かりやすいですので、詳しく知りたい方は、下記を。

理事長解任訴訟(区分所有法25条2項による)

こういう話をすると、結局、ほとんど(私が知る限りではすべて)の人が納得いかないものの、解任請求をあきらめるのです。

不正行為を行っている者、それを黙認して者、無関心に逃げ込んでいる者…そういう人たちの中で(もちろん、自分のためでもありますが…)、エネルギーもお金も費やして、それでも、勝てるという保証がないことに、踏み切れないのは当たり前だと思います。しかも、同じマンション内に暮らしながらの訴訟は、精神的にもかなりきついものになります。家族もたいへんな思いをします。

ですから、このまま行ったら、管理不全マンションの道をたどると気づいてしまった人は、立て直すのはあきらめて、そこを見捨てて、売却して出ていく確率が高いのです。この相談者も、こんなマンションだとは知らずに購入したのです。重要事項説明書では分からないのです。むしろ、理事のなり手不足とは無縁のマンションだと評価されるかもしれません。で、今なら、何の問題もなく市場で売却できるのです。

こうして、疑問を感じて行動しようと思った人が、マンションを出ていくことで、理事長による管理組合の私物化が続きます。理事長もその取り巻きも、高齢のようですから、管理組合の私物化にも、いつかは終わりが来るのでしょうが、そのときの管理組合に回復する力が残っているかどうかはわかりません。

こういうマンションが、実は一番やっかいだと、自分の無力さと共に感じています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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