饅頭じゃなくてパン?法事にあんぱんを配る山陰「法事パン」の謎

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法事・法要の参列者に「まんじゅう」ではなく、「あんぱん」をお持ち帰りいただくという地域があるのをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では著者で繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、なぜその地ではあんぱんがまんじゅうに取って代わったのかを考察しています。

法事に「あんぱん」を配る風習が、山陰地方に残っているのはなぜ?

山陰地方の一部、島根県東部と鳥取県西部では、法事に訪れたお客さまが帰る時、引出物として「あんぱん」を手渡すと言います。「法事パン」と呼ばれ、誰ひとり不思議に思うことのない風習として、定着しています。

最近でこそ廃れてきてはいますが、日本各地で「法事まんじゅう」が配られることはありました。固定観念ではありますが、やはり和物の「まんじゅう」の方が違和感がないように思います。

なぜ、あんぱんになってしまったのでしょうか

実は、地元の人も知らないし、文献も残っていません。「こうではないか?」という“説”は、いくつかありますが。

古来の風習として、参列者がお供え用に持ってきた餅を、法要が終わった後に、また参列者に配るというものがあります。昔のことなので、わざわざ餅をついて持っていったのですが、大変な手間がかかるので、やがて「まんじゅう」から「あんぱん」へと変化していったのではないかと言われています。

しかし、この説では「まんじゅう」が「あんぱん」に変わった理由がわかりません。“食料”として貴重だった「餅」が、次の時代の“甘い”貴重品「まんじゅう」に変わるのは理解できます。特別な日だからこその貴重品なのですが、「あんぱん」にはそれが当てはまりません。

そこで、もうひとつの説。

発祥は昭和30年代で、40年代に入って広く普及したと言います。高度成長期となり、欲しいものが手に入りやすくなったのです。甘いものは「まんじゅう」だけではありません。そこで、見栄えがする上に、当時は目新しい食べ物だったあんぱんが選ばれたのではないか、とするものです。

確かに、時代的には“ハイカラな洋物”だったのでしょう。お決まりの「まんじゅう」には飽きていたので、「あんぱん」の登場に人びとは喜んだのかもしれません。

しかし、これだけでは、なぜ「あんぱん」なのかがわかりません。残念ながら、諸説を探っても、これ以上のものは出てこないのです。

なので、私が勝手に推測します。

ある日、法事に呼ばれたひとりの“おやじ”。本来なら「法事まんじゅう」を持参するところですが、本人は「まんじゅう」が大嫌い。引出物として、また持ち帰るのは気が進まない。何か、もらって嬉しいものはないかと考えます。

このおやじは、高度成長期を謳歌している、新し物好きなので、最近巷に出現した「あんぱん」を気に入っていました。これなら、他の参列者も喜ぶだろうと、パン屋に頼んで「あんぱん」を箱詰めしてもらい、のしをつけて持っていったのです。

これが「法事パン」の起源である。

……というのが、私の説です。

物事の起源というのは、意外と単純なことが多いものです。聞いてみれば、“そんなこと?”となるのです。また、日本の風習というのは、商売人が仕掛けたものも多いのです。節分の恵方巻き。バレンタインデーのチョコレート。お中元やお歳暮。平賀源内が「土用の丑の日」を作ったことは有名です。

これと同じように、「法事パンもパン屋の巧みな戦略なのかもしれません。

ある日、パン屋の店先に張り紙が……。

「法事の引出物には、まんじゅうよりあんぱんが嬉しい!」

こうして、新しい風習が生まれたのではないでしょうか。

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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