スポーツ庁が23日、小学5年と中学2年の2019年度「全国体力・運動能力、運動週間等調査」(全国体力テスト)の結果を公表し、実施種目の成績を点数化した「体力合計点」が男女ともに大幅に低下したことを時事通信、産経新聞、毎日新聞などが伝えた。小学5年の男子は、2008年度の調査開始以来最低の結果だという。
【小5男子の体力、過去最低】
握力や持久走など実技8種目の合計点平均は昨年度まで上昇傾向でしたが、小中の男女とも一転して数値を落としました。スポーツ庁は要因として、スマートフォンの普及などに伴い子供たちの運動時間が減少していることなどを挙げました。https://t.co/ZXUfiWlTAx— 産経ニュース (@Sankei_news) December 23, 2019
時事通信の報道によると、スポーツ庁はその背景として、(1)授業以外の運動時間減(2)スマートフォンなどの使用時間増(3)小中男女の肥満増―などがあることを指摘している。特に子どもが運動していた時間がスマホなどに費やされている可能性について述べ、「小さいうちから使用時間が長くなり、幼児期からの累積の運動時間が減ってきたのではないか」と長期的な影響が及んでいるとの見方を示している。
スポーツ庁がスマートフォンやゲーム機、パソコンなどの画面を見ている時間を調査したところ、平日に1時間以上使っている子どもの割合は、小5男子83.3%、小5女子73.1%、中2男子90.3%、中2女子87.6%に上り、いずれも16年度より多く、中2女子は6.3ポイントも増加。
また運動やスポーツの好き嫌いと、スマホ使用時間の相関関係も浮き彫りとなったことから、同庁は、体育の授業を改善する必要性とともに、授業以外でも「仮想現実(VR)技術で疑似体験しながら体を動かす」などといった運動時間の増加につながるスマホなどの活用を模索すべきだとしているという。
こうした報道を受けてネット上では、「ボール遊び禁止の公園が増加したり、遊具を撤去したりして、社会が運動機会を奪っているからでは?」「子どもの声がうるさいなどという心ない声を発する人が多いことが問題」「今の子どもたちは習い事や塾で忙しいのではないか」など、スマホ利用以外の要因もあるのではないかという意見が挙がっている。
中でも多いのは、「子どもの遊び場の少なさ」に関する疑問の声だ。先週MAG2 NEWSでも、思いっきりボール遊びができる場所を取り戻すため、区議会に働きかけた小学生らの取り組みを紹介した(参照:「社会は変えられる」という自信に。小学生の陳情を区議会で採択)が、「ボール遊び禁止」「大声を出さない」など公園に注意事項が増え、子どもたちが公園で遊びづらくなっているという現状が確かに存在する。
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外で行き場を失った子どもたちが家の中でスマホやゲームに興じる時間が増えることは、必然ではないだろうか。「ネットの世界以外に居場所のない子どもたちがスマホ依存症になりやすい」という話を聞いたことがある。スマホ以外に楽しいことがあれば、子どもは外に出て行くのである。
もっと社会が寛容になり、子どもたちの遊び場を取り戻すことで、わざわざ体育の授業を改善したりスマホの活用法を模索したりせずとも、運動時間の確保や運動能力の向上につながるのではないかと思うのだが、スポーツ庁はどんな策を講じるのだろうか。