では、その場合、朝鮮半島はどうなるのでしょうか。
もし、軍事的な攻撃が北朝鮮に対して加えられるのであれば、韓国は間違いなく、北朝鮮からの大砲やロケット弾による集中攻撃を浴び、首都ソウルは火の海になると思われます。もちろん、アメリカが核兵器を使用するような極限の対応をした場合は違った結果がもたらされることになりますが、韓国は無傷ではいられないでしょう。ただし、この場合、もし生き残れば、韓国はまだ国として存続できるかもしれません。
ありえないシナリオだとは思いますが、仮にトランプ大統領側が大きな譲歩をして、北朝鮮の核開発を、ICBMを破棄すればという条件の下、見逃すようなことになれば、北朝鮮のバックにいる中ロのサポートを得て、北朝鮮による朝鮮半島南北統一が実現してしまうかもしれません。
その場合、以前にもお話ししましたが、現在の軍事境界線(DMZ)である北緯38度線は、対馬海峡辺りまで南下し、北東アジア情勢とパワーバランスは大きく変わることとなるでしょう。
韓国にとって、もしかしたら逃げ道があるとしたら、対北朝鮮、対日米方針の大転換が急に進むことぐらいでしょうか。しかし、文政権下では考えづらいですし、来年4月に総選挙を控える政治日程的にも非現実的でしょう。
懸念事項があるとすれば、韓国内そして韓国軍内ですすむ反文政権の動きです。行き着くところまで行けばクーデターにまで発展しかねない緊張状態になっているそうですが、このハンドリングを間違えたら、政権どころか、国家としての存亡も危ぶまれる状態となるかもしれません。
そして、1997年来久々で、かつ最悪と言われる経済・財政危機が韓国経済を襲っていることも大きな懸念です。欧米における韓国企業の締め出しと韓国内での欧米資本の引き揚げ、国内の若年層失業率の悪化、日本やアメリカ、欧州との貿易上のいざこざなど、安全保障面以外の側面でも大きな爆弾を抱えているのが、今の韓国の状況と言えます。
どの起爆装置がトリガーとなるかは分かりませんが、朝鮮半島にある韓国も北朝鮮も、それぞれが置かれている状況はこれまで以上に緊迫しているといえるでしょう。
その半島のすぐ近くに位置する日本。今は韓国との関係は最悪の状態と言わざるを得ませんが、朝鮮半島有事の際には、日本も恐らく無傷では済まないでしょう。徴用工問題を始めとして、2020年2月ぐらいに一気に火を噴きそうな案件が座礁している中、どのように日本国の国家安全保障を確保できるのかについて、本気で準備をしておく必要があると考えます。
2020年は、我々が住まう北東アジア地域はもちろんのことながら、米朝の緊張がどのような帰結を迎えるのかによっては、東京オリンピック・パラリンピックどころではない“現実”を我々に与えることになってしまうかもしれません。
各国には節度ある態度を望みたいと思います。