ここにもアベ友の影。無茶な「リニア新幹線」がゴリ押しされる訳

2020.01.15
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糸魚川静岡構造線をトンネルで横断するという暴挙

もう1つの文明論次元の問題は、果たして人間はコンクリートの力で自然を捻じ伏せることができるのかということである。

東京~名古屋間286キロのうち9割近い246キロはトンネルで、その中でも特に難工事が予想されるのは静岡市の最北端で大井川を横切って南アルプスの百名山の1つ赤石岳(標高3,120メートル)の北の辺りをブチ抜くトンネルである。

言うまでもなく、長野県の諏訪湖から南アルプス及びその東を流れる大井川に沿っては、「糸魚川静岡構造線という日本列島を東西に二分するほどの大きな断層線が通っている。それはユーラシア・プレートと北米プレートとがせめぎ合いを繰り返して極めて複雑な地層の入り組みを形づくり、今なお年間4ミリの隆起が続いているところである。こんなところにトンネルを掘ろうと考えること自体が、神を畏れぬ仕業としか思えない。

ところがJR東海には、南アルプスの構造線を横切る工事がどれほどのリスクを孕んでいるかの認識は皆無で、地質学者の塩坂邦雄によると「南アルプスの地質を均等だと思ったようで、山梨側の1カ所しかボーリング調査をしていない」という(19年11月24日付赤旗)。頑丈な鉄筋コンクリートで固めれば、どんなところでも大丈夫とJR東海は考えているのだろう。

百歩譲って、トンネルそのものは大丈夫なのだとして、現に差し迫っている問題は、この工事によって大井川の水量に大きな変化が生じるのではないかということで、これをめぐる静岡県知事の非妥協的な姿勢が、27年開業が難しくなった直接の理由の1つである。それは当然で、富士川、大井川、天竜川の3本の豊かな川が静岡の生態系を支える根本で、とりわけその中心である大井川の水源破壊の恐れを同県知事が容認できるはずがない

ところがJR東海の対応は傲慢極まりないもので、「南アルプスのトンネル工事で減少する水量は最大で毎秒2.67トン」という根拠不明の試算を持ち出して、「この程度ならポンプで吸い上げて川に戻せる」と言い、後には「毎秒3トン」と言い直した。ところが、これは工事現場で流出する水量の話で、工事によって地下水の水脈を切断してしまうと、その上流の川の水源が枯渇し、イワナなども絶滅する可能性が高いのに、JR東海はそのような山と水と川の絶妙な生理など何も理解しておらず、現場で出た水をポンプで戻せばいいなどと子供じみたことを言ってきたのである。

コンクリートで固めれば自然を思うように抑えつけることができると思うのは、明治以来の東京大学工学部を中心とする発展途上国型の行け行けどんどんの土建国家イデオロギーで、それは9・11によって最終的に破綻したのであるけれども、安倍首相と葛西のコンビはまだその時代錯誤の19~20世紀の思想にしがみついている

リニア技術のリスクが幾つも解消されていない

上掲の読売12月10日付記事は「日本のリニア技術は、ほぼ完成済みで、米国でも導入が検討されるなど、海外への輸出も視野に入っている」としているが、とんでもない。これはJR東海の広報にベッタリ癒着した提灯記事にすぎず、本当のところは何ら完成していない危ない技術であることは、『選択』19年12月号「実用技術“完成”は嘘八百/JR東海がひた隠す“リニア・リスク”」が詳しく描いている。要点を紹介する。

第1に、リニアは、灯油を燃料とするガスタービン発電装置で車内の照明などの電力を賄うことになっていたが、時速500キロで走る車体に大量の燃料を搭載して走らせるのは余りにも危険。そのためJRはリニアのレール部分から非接触で電気を取り込む画期的な技術を開発したが、これはまだ実験段階に留まっている。

第2に、「すれ違いの恐怖」問題である。リニアのガイドウェイと呼ばれるレール部分には、強力な電磁コイルが仕込まれていて、それで車両を浮上させ、走行させる。片道単線で走った場合に時速500キロの走行を実現できることは実証されていて、その限りでこれは「完成済み」の技術である。だが問題は、営業運転に入った場合には頻繁に時速500キロの車両がすれ違い、そこに時速1,000キロという音速に近い相対速度が生じる。この速度で車両がスレスレの近距離ですれ違った時に何が起きるかは「人類にとって未知の領域」で、空力的な衝撃がどれほどのものかがまずは問題であるけれども、それ以上に、その時に双方の「電磁場の相互作用がどのようなどのような挙動を見せるか」が実は大問題である。しかしJR東海は「リニア車両の『すれちがい実験』をするそぶりさえみせていない。

第3に「クエンチ」問題がある。これは前々から言われていることで、車両を浮上させる超電導磁石は、マイナス253度で電気抵抗のない状態を実現するが、それが微小な部分で超電導が破れると急激に磁石全体が常電導となり、これを放置すれば巨大な爆音を伴って急激に極低温冷却液が沸騰して突然に磁力を失う。この超電導磁場の突然の消失がクエンチで、1999年に山梨実験線で起きたと山梨日日新聞が報じたこともある。専門家はそれを克服できたのかどうかを問うてきたけれども、JR東海は答えたことはない

第4に、非常時に車外に脱出した乗客の電磁波被害という問題がある。リニアに乗っただけで電磁波の影響があるのではないかということがよく言われるが、それは誤解で、リニアの車両の車内は完全に遮蔽されている。しかし、事故が起きて乗客が急ぎ脱出しなければならないという時に、車外の強い電磁波がどういう影響を及ぼすかについてJR東海は口を閉ざしている

補足すると、このことは上述の南アルプス貫通トンネルと重ね合わせるとイメージしやすい。事故があってそのトンネルの真ん中でリニアが止まったとして、そこから1,000メートル以上も上の南アルプス山系の尾根に向かって非常口が設けられているはずもない。そこで仮にトンネルそのものが崩落していなかったとすれば、乗客はトンネルを東か西のどちらかにむかって徒歩で脱出を図るだろうが、その前に彼らは車外に出た途端に電磁波でやられてしまうということである。

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