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桜を見る会また不祥事。公文書法違反を認めても逃げ回る安倍官邸

20日に招集される通常国会でも野党の厳しい追求が予想される、「桜を見る会」を巡る数々の問題。10日には菅官房長官が、名簿の取り扱いに関して公文書管理法違反があったことを認めましたが、相変わらず官邸や内閣府は名簿の存在を頑ななまでに「隠蔽」し続けています。なぜ彼らはここまでして隠し通そうとするのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんは今回、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』でその理由を推測するとともに、公文書管理法違反の責任すら取らぬ政権サイドを強く批判しています。

公文書法違反を認めても「桜を見る会」隠ぺいをやめない安倍官邸

第2次安倍内閣が発足して初めて「桜を見る会」が開かれたのは2013年の春だ。驚くべきことに、その年から昨年までの7年間、このイベントの招待者に関する記録がいっさいない

なくても、安倍首相がどのような条件に合う人を宴に招いたのか、なぜ年々、参加者と、税金で賄われるそのコストが増大していったのか、担当部局に聞けば、すぐに答えが出てくるはずである。

ところが、歴代の担当者全員が、悪性の健忘症にでもかかったのか、記憶が鮮明でない、名簿を廃棄したのでわからない、などとシラを切る

そうこうしているうちに、年が明けて1月10日の定例会見で、あの菅官房長官が、招待者名簿に関する記録がないことについて「公文書管理法違反でした」とやけに素直に観念した、いや、したかに見えた。

違反なら、誰かが責任をとるのかと思いきや、事務的ミスだから、これから改めると言う。このあたりのごまかしは、今まで通りだ。

厳密に言えば、菅長官が違反だと認めたのは2013年から17年までの「桜を見る会」招待者名簿に関する記録を、行政文書ファイル管理簿と廃棄簿に残していなかったことについてだ。少し詳しく説明しよう。

2018年と19年の招待者名簿はなぜか「保存期間1年未満」の文書とされ、即時廃棄できるようになった。変更の根拠はいまだ不明だ。

それ以前、つまり2013年から17年までの招待者名簿は「保存期間1年」だった。保存期間1年以上の行政文書は、「1年未満より厳格な管理が求められる。

公文書管理法第6条、第7条に、概ね以下のような記述がある。

行政文書ファイルについて、保存期間の満了までの間、保存しなければならない。ファイルの分類、名称、保存期間、期間満了日、満了したときの措置などを「行政文書ファイル管理簿」に記載しなければならない。廃棄しようとするときは、内閣総理大臣の同意を得なければならない。

2013年から17年までの招待者名簿は期間満了ですでに廃棄されているが、同法に基づいて行政文書ファイル管理簿と廃棄簿に必要事項が記載されていなければならないということだ。

ところが、管理簿、廃棄簿ともに、「桜を見る会」招待者名簿に関する記載は見当たらない。当然、公文書管理法違反ではないかという疑念がわく。

これについて、1月7日、9日、10日の定例会見で、菅官房長官を追及したのは主として北海道新聞、朝日新聞の記者だった。

当初、菅官房長官は「詳細は内閣府に聞いてほしい」などと、例によって空とぼけた言い方をしていたが、行政文書ファイル管理簿、廃棄簿に記載がなかった事実は動かしがたく、10日の会見では明確に公文書管理法違反であることを認めた。以下は、その会見のやりとりの一部だ。

朝日記者 「長官としては公文書管理法に反していたという認識はあるか」

 

菅長官 「結果として公文書管理法の関連規定および内閣府の文書管理規則に違反する対応だった」

 

朝日記者 「なぜこのような運用になったのか」

 

菅長官 「担当者に確認しているが、そうした問題についての対応意識が少なかったんじゃないかと」

 

北海道新聞記者 「公文書管理法では管理簿に記載された行政文書を廃棄するさい内閣総理大臣の合意を得る必要があるが、こうした審査手続きを経ずに担当部署が勝手に廃棄していたことになるのか」

 

菅長官 「廃棄の際に事前合意の手続きを経ていなかったということであります」

公文書管理法を無視した対応を5年にわたって行い、直近の2年については「保存期間1年未満」に招待者名簿を分類して、さっさと廃棄したということになる。

管理簿、廃棄簿になぜ記載しなかったのかを問われた菅官房長官は「内閣府に確認したら、事務的な記載漏れということでありました」と言う。法に違反していることは認めながらも、「事務的ミス」で済ませようとしているのだ。そんな単純ミスが毎年続く道理がない

招待者名簿は内閣府がまとめて招待状を発送するための名簿だが、それは各省庁や首相、官房長官、自民党などからの推薦者名簿をもとにしている。

各省庁には推薦者名簿が保存されているのに、安倍事務所からメールで送信された推薦者名簿は廃棄されているという。安倍事務所のメールを受け取るのは内閣官房(官邸)の内閣総務官室で、そこから内閣府の人事課に転送され、人事課が招待者名簿にまとめる仕組みだ。

すべての府省と部局のうち、内閣総務官室だけが推薦者名簿を「1年未満」文書として破棄していたことがわかっている。安倍事務所のものを含むからであろう。

むろんこれも招待者名簿と同様、電子データまでほんとうに廃棄しているかどうか、きわめて疑わしい。データを完全に消去したことを示すデジタル記録の提出を野党が求めても、いっさい応じようとしないからだ。

野党ヒアリングで追及の矢面に立つ内閣府の総務課長は「担当者の記憶が不鮮明で、よくわからない」と逃げまくる。誰が聞いても、ありえない回答だ。

真実を知るのは、招待者名簿とりまとめと発送の実務にあたった内閣府人事課である。それなのに、人事課の面々はオモテに出てこない。菅官房長官も、「担当したのは内閣府人事課に限られている」と言いながら、奥に引きこもらせたままだ。

野党の追及チームは、なんとしても内閣府人事課にアプローチしなければならないが、首尾よくいかない。吉岡秀弥内閣府人事課長は再三にわたるヒアリングへの出席要請に応じようとしないのだ。

そこで立憲民主党の黒岩宇洋衆院議員は、吉岡課長から集団によるヒアリングではなく個別のレクを受けたいと申し入れた。吉岡課長は了承したにもかかわらず、約束の日時になって、待てど暮らせど黒岩氏の部屋に姿を現さない。つまり、黒岩氏はすっぽかされたわけである。

黒岩氏は「課長に連絡するように言ってください。何時でもいいですよ」と人事課に申し入れたが、なしのつぶて。何度か人事課に電話で問い合わせても、出てくる答えは「課長はどこにいるかわからない」「課長の携帯番号はわからない」。

黒岩氏は「立法府からの要請だというのに、庁内かくれんぼどころか、神隠しのようなことをやっている。すさまじいですよね。通常のレクさえ受けられないんだから」と憤懣やるかたない様子だ。

公文書管理法は第1条で「公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ…国及び独立行政法人の諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」とその理念を掲げている。

それに違反した責任は誰がとるのか。菅長官は「二度と繰り返さないよう内部で徹底したい」と毎度、おなじみの逃げ口上でかわそうとするが、それですむのだろうか。

政治権力が公文書をないがしろにするようになれば、必ずと言っていいほど、腐敗や悪事がまとわりついてくる。

悪徳詐欺商法の権化ともいうべきジャパンライフの山口隆祥元会長などはその一典型だ。2015年の「桜を見る会」で、総理枠のリストに入れたため、まんまと招待状を受け取った山口元会長は総理のお墨付きの証として使い、次々に高齢者から多額の老後資金を言葉巧みに奪い取って全国に被害を拡大させた。

安倍首相は国会で「山口会長と一対一でお会いしたことはなく、個人的な関係は一切ない」と無関係を装っているが、それならなぜ2015年の「桜を見る会」に招待したのだろうか。その説明責任はいまだ果たされていない。

「桜を見る会」の安倍首相枠をめぐる闇は深い。何が飛び出してくるかわからないからこそ、官邸と内閣府は招待者名簿を徹底的に隠そうとするのに違いない。

2019年の招待者名簿の提出を共産党議員が要求した昨年5月以降、2013年にまでさかのぼって、「桜を見る会」に関するあらゆる記録を削除した、あるいは削除したフリをしている可能性もなくはない。だとすれば、それと引き換えに、公文書管理法違反を指摘され、認めざるを得なくなったことになる。

かりに、「事務的ミス」で言い逃れし、責任を回避できると踏んでいるとすれば、悪質極まりない。安倍首相夫妻による権力私物化の実態を隠すための官邸や内閣府の異様な説明拒否は、もはや救いがたいレベルに達している。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

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