せっかく楽しみにしていた料理が冷めていたり、ドリンクがぬるかったり…。そんな飲食店に当たってしまうと、損をした気分になるものです。今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』では飲食店コンサルタントの中西敏弘さんが、焼き鳥やラーメンを例に取り、温度管理がいかに売上につながるかを解説しています。
“出来立て”をお客様のテーブルに運ぶことにこだわってみないか?
以前、僕のご支援先で焼き鳥店を経営している会社がありました。当時、2店舗営業されていたのですが、創業店が50席ぐらいんの規模で、もう一つは、120席ぐらいの大型店でした。
両店とも、何度も訪店し店の改善点を抽出しながら、改善を重ねていたのですが、ある時、両店の焼き鳥の「味」の違いがすごく気になりました。
焼き方は、焼き方のあるべき姿、コツ・ポイント等を言語化し、共有していたので、両店との同じように焼けているはずなのですが、なんとなく、50席のお店の方が美味しく感じたのです。
そこで、両店で何が違うのかをスタッフ皆でミーティングをした結果、ひとつのことが分かりました。それは、「温度」です。
50席の方が、焼きあがってから、テーブルに運ばれる時間が、120席の店よりも当たり前ですが、「早い」のです。やはり、120席の店の場合は、デシャップから離れたところに運ぶと、どうしても「少し」冷めてしまいます。このちょっとした「時間差」が焼き鳥自体の「温度」を下げることになり、それが「味」に影響していたようでした。
そこで、120席の店ではできるだけ「強火」で焼くように心がけ、焼きあがったらすぐに持っていく。また、できるだけ“まとめ焼き”(10本ぐらいまとめて焼き上げる)を避け、大変だけど、こまめに客席に焼き鳥を運ぶことを心がけるようにしました。
たった、それだけのことですが、数か月後、120席の店は売上が好転し始めました(もちろん、それ以外の改善も功を奏したと思いますが…)。
この時以来、焼き鳥店のご支援を何度も行っていますが、焼き上がりの「温度」にこだわるように指導するようになりました。
もう一つ温度にまつわる話があるのですが、あるラーメン店を支援していたときの話です。
スープのつくり方や内装などを見直し、売上も改善してきたのですが、少しすると売上が落ち着いてきました。何か別の対策が必要ということで、SNSを活用したりなどしていましたが、イマイチ、売上アップには繋がりませんでした。
ある時、スープの「温度」が気になり、「もう少し、熱く提供できないのか?」とミーティングで議題になり、一度、スープの温度を測ってみることにしたようです。
2店舗運営していたのですが、売上がややいいA店と売上が今一歩苦戦しているB店のスープの温度を図ってみると、A店は80度。そして、B店は75度だったそうです。
もしかしたら、この“たった5度”が、お客様の味の評価を変えるのでは仮説を立て、2店舗で「スープの温度を80度以下にしない」取り組み(丼を温めるなどなど)を徹底したところ、この会社においても数か月後から、売上が好転し始めました。
僕のご支援先では、基本的に「販促」をするというより、オペレーションの改善を重ね、お客様満足度を向上させることで売上アップを図るようにしています。
お客様満足度をアップさせるひとつの視点として、商品力、商品の質を維持・向上させることがとても重要なのですが、やはり、「温度」というのはとても大切な視点だということを最近つくづく感じています。
飲食店では昔から、「熱いものは熱いうちに。冷たいものは冷たいうちに」というのは、よく言われている事ですが、意外に、これを忘れている店が多いように思います。
上記の例のように、できるだけ温度を高くする(高く維持する)ための取り組みをすることはもちろんのこと、「出来上がった料理をすぐにお客様のテーブルにお運びする」という基本中の基本が、意外に出来ていない店が多いような気がします。
デシャップに料理が置かれたままになっているというシーン。よく見かけるような気がします。慣れてくると、「できたてをお客様のもとに運ぶ」ということを忘れがちです。とくに、ベテラン社員、ベテランアルバイトさんほど、こんな傾向があるような気がしています。
ほんの1度か2度かもしれませんが、この1、2度の温度に“こだわる”ことがお客様の満足度に繋がるのではないかと思います。
“出来立て”の料理、ドリンクをお客様のテーブルに運ぶことにこだわってみませんか?
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