情報筒抜けか。河井案里氏ウグイス嬢の報酬疑惑がバレた裏事情

 

ウグイス嬢争奪戦が熾烈だったことは想像に難くない。溝手、河井陣営ともに長い選挙歴があり、選挙サポート会社などに頼らなくとも、かき集める力はあるだろう。ただ、同じ自民党だけに、来てほしいウグイス嬢も共通していたのではないかと推察される。

従来なら、溝手氏は参院選、河井克行氏は衆院選、案里氏は広島県議選と、すみわけができていたが、昨年の参院選はそうはいかない。河井陣営は法で定められた上限1万5,000円の倍額を提示することによって、意中のウグイス嬢を確保できたということではないか。

だが、カネにまつわる裏工作は、敵陣営に筒抜けになりやすい。ウグイス嬢たちの横のつながりがあるからだ。

ウグイス嬢は年齢も職歴もさまざまで、ウグイス嬢派遣などを業とする会社に登録して全国的に活動するプロもいれば、バスガイドや司会者がアルバイトしたり、声に覚えのある主婦やフリーターが活躍しているケースもある。そういった人たちが選挙によって味方になったり敵になったりしながら、ウグイス嬢という立場を共有して、情報交換しているであろう。

今回の一件は、週刊文春19年11月7日号のスクープで火が付いた。同号の発売日である10月31日朝、河井克行氏が、参院選後に念願かなって就任したばかりの法務大臣を泣く泣く辞任した。

文春は「ウグイス嬢や河井氏の後援会関係者、広島県連関係者などを取材」して情報をつかんだと書いているが、ふつうに考えれば、ネタ元は、落選の溝手陣営についた自民党広島県連の関係者ではないだろうか。その情報を得て、ウグイス嬢や後援会に取材を広げたということだろう。

文春をはじめとするこれまでの報道によれば、河井陣営は13人のウグイス嬢に1日あたり3万円を支払っていたが、法定通りを装うための工作をしていた。

たとえば文春が入手した7月21日付の領収書を見ると、1日1万5,000円で8日分の合計額12万円がウグイス嬢の手で書き込まれているが、それとは別に、公示前7月1日付の同一筆跡の領収書もあって、そこには「人件費として」の但し書きで12万円が記載されている。まるで選挙前になにがしかの仕事があったかのようだが、文春の取材ではそうした事実はないという。

ともあれ、参院選で案里氏が勝利し、河井夫妻は喜びの頂点に達した。克行氏のフェイスブック(19年8月1日)には、河井夫妻と菅官房長官を含む9人が宴席で一つの写真におさまった姿が公開され、以下のコメントが記されている。

私が主宰する自民党若手・中堅議員の会「向日葵(ひまわり)会」は、今夜、菅義偉内閣官房長官を招き、参議院議員選挙の慰労会を行いました。妻を含めた2名の新会員を加え16名になった「向日葵会」。互いに学び合いながら、これからも安倍総理大臣を支えて行きます。

ところで筆者は、激戦になったがゆえに、法定の2倍の報酬を支払ってでもデキるウグイス嬢を確保しようとしたと書いたが、実際のところは、克行氏のこれまでの選挙でも同じようなことが行われてきた可能性があることも指摘しておかねばならない。

プロを自任するウグイス嬢や、派遣する会社のなかには、プライドにかけて1万5,000円では引き受けないところも多いと聞く。ウグイス嬢への二重報酬の違法行為は選挙における「商慣行」として一部で定着し、政界や選挙コンサル業界では「暗黙の了解」になっているとネットで暴露する事情通もいる。

なにしろ、選挙になるとわかったら候補者が何より先に手配し、確保しておかなければならないのはウグイス嬢だと言われるほどである。それだけウグイス嬢の力量はピンからキリまである。

だとすれば資金力の豊富な陣営は先んじて、カネに糸目をつけずハイレベルのウグイス陣容を整えようとするだろう。これまで国政選挙でウグイス嬢の報酬が問題になったケースはほぼなかったこともあり、河井夫妻は何のためらいもなく、違反行為に走ったのではないだろうか。

print
いま読まれてます

  • 情報筒抜けか。河井案里氏ウグイス嬢の報酬疑惑がバレた裏事情
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け