都内の自動車保有数は年々減少する一方、駐車場台数は増加との統計結果が明らかになりましたが、この「駐車場過多」の原因には、東京都のある条例の存在があるようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、都がようやく駐車場設置義務の基準緩和に動き出した現状を紹介。さらにその「緩和」で新たに浮かぶ可能性や問題等を考察しています。
いよいよ都心の駐車場設置義務緩和へ
こんにちは！廣田信子です。
都心居住の車離れが進んでいます。背景には、
- 高齢化による運転免許の返納者の増加
- ライフスタイルや価値観の変化に伴う若者の車離れ
- 公共交通網の整備
- 駅近立地の再開発の進展
等があります。人口が密集している地域では、カーシェアリング等も進んでいます。2017年度の国土交通省の調査によると、東京23区では、過去10年間で駐車場台数が1.24倍増えたのに対し、自動車の保有台数は0.91倍とマイナスになっています。
車離れと言われますが、全国で見ると、この四半世紀で車の台数は3割増えているのに、人口が増加している東京23区で、車の台数が1割も減少しているというのは想像以上です。車がないと生活できない地方と、公共交通機関の充実により車が必要ない都心とでは、車需要が全く違うというのが分かります。
現在、都道府県等は条例をつくり、大規模施設に対して一定数の駐車場を確保するよう義務づけています。駐車場条例は、車社会の最盛期に、駐車場不足による路上駐車の増加を抑制するための仕組みとして定められています。
基準は自治体ごとに異なりますが、例えば、東京23区の場合は、床面積1,500平方メートル超のオフィスビルは300平方メートルにつき1台分、床面積2,000平方メートル超のマンションには350平方メートルにつき1台分の設置義務があります。2014年には、都条例を改正し、少し基準の緩和をしましたが、まだまだ、需給のバランスはとれていないのです。
駐車場の設置義務が時代に合わなくなっていると言われて久しいですが、高齢化、公共交通の整備はますます進み、将来的に駐車場の需給バランスがいっそう崩れると予想されます。都心、駅近マンションでは、分譲時から大幅に駐車場に空きが生じているのが当たり前になっています。既存マンションも設置義務を満たすために機械式駐車場にしているところは、空きが生じても機械式駐車場を維持するのに費用がかかり負担が大きくなっています。かといって、使っていない機械式駐車場を廃止するには、条例というハードルがあるのです。
実は、オフィスビルや商業施設でも、駐車場が埋まらない状況が続いているといいます。そういえば、最近、都心に車で出かけても、新しいビルのほとんどが一般も使用できる駐車場を設置しているので、駐車場の心配をしなくてよくなりました。それはありがたいことですが、地価の高いスペースの有効活用と言う面では問題があるのです。
東京都は、ようやく、都心部の商業施設やオフィスビル、マンション等の駐車場設置基準の本格的緩和に乗り出します。自家用車の減少に伴う駐車場需要の先細りを見据え、空きスペースの有効活用を図るのが狙いです。都は地元自治体やディベロッパー等の意向も踏まえ、早ければ、来年度中の都条例改正を目指す考えだといいます。条例が改正されれば、マンションでも駐車場を減らし、そのスぺースを別の用途に活用することを検討できます。
空き駐車場問題への対応は、都心のセキュリティが厳しいマンションほど大変です。セキュリティ内に外部者を入れることに対抗があって、空き駐車場の外部貸しができないという話を聞きます。先日も、外部貸しした場合にどんな問題が起こり得るか…と相談を受けました。セキュリティやプライバシー重視がコンセプトのタワーマンションで、外部の人が自由に駐車場に入ることに対して、完全に不安を払拭するのは難しいかもしれません。
外部に貸して収入を得るというのも空き駐車場対策の一つですが、設置台数が緩和されたら、機械式駐車場を平置きにしてメンテナンス費用を削減する、駐車場スペースの一部を別の用途に使う…等いろいろな可能性が広がります。
外部貸しの合意形成が難しいマンションは、少し様子を見てもいいかもしれませんね。
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