新型肺炎に打つ手なしか。伝染病に対応できぬマンションの不安

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店頭からマスクが消えるなど、新型肺炎パニック一歩手前状態と言っても過言ではない日本。今後、爆発的感染は起きてしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、報道されている「無自覚感染」に注目し、エレベーターなどで密着するシーンも多いマンションの伝染病対策を呼びかけています。

新型コロナウイルス対策がないマンションへの不安

こんにちは!廣田信子です。

新型コロナウイルスによる肺炎での死者が100人を超えました。日本でも、武漢への渡航歴がない日本人に新型コロナウイルスの感染が確認され、いよいよ日本国内での感染の拡大が心配されるステージに入りました。

感染した日本人の方は、1月14日に悪寒やせきの症状が出て受診しています。1月の早い段階で、観光バスの運転手として武漢からのツアー客と強い接触があったことが感染の原因だと推測されます。しかし、ツアー客には発病の症状がなかったということです。

日本人感染者の方も、病院で受診していても25日まで新型コロナウイルスに感染していることがわからなくて、それまでは普通に周囲の人と接触をしています。潜伏期間が長い、症状が軽い人がいる等、感染の拡大を防ぎにくい状況も分かってきています。政府は、28日朝の閣議で、今回の肺炎について、感染症法に基づく、「指定感染症」にすることを決定しました。

中国の武漢市に閉じ込められている日本人を帰国させるため、チャーター機が派遣され、1月29日にはチャーター機で206人の方が日本に戻りました。チャーター機には、検疫官や医師、看護師が同乗し、帰国する人は、機内で、発熱やせきの有無などの健康状況や、国内での連絡先をチェック、必要に応じて検温も行われ、症状が確認された場合、応急隔離ブース内の席に座るなどの措置がとられたといいます。

気になるのは、帰国した時点では症状がない人への対応ですが、厚労省によると、新型コロナウイルスの潜伏期間は最大14日とされていて、帰国者には2週間程度「自宅待機」をして、不要な外出を避けるよう伝え、万が一、感染が確認された場合には、濃厚接触者を確認するなどして対応するといいます。

自分が感染していないかという心配に加え、自分たちが周りに感染させないか、周りから特別な目で見られないかという心配が加わり、武漢からの帰国した方の心労は計り知れません。早く、通常の生活に戻れるようにと願います。

しかし、一方で、前出の武漢からのツアー客の状況からみて、武漢からの渡航が禁止になる以前に、本人も気づかないうちに、日本に滞在し、知らないうちに新型コロナウイルスを持ち込んでいる方がいてもおかしくありません。中国の他都市にも感染が広がっていますので、検疫のチェックに引っかからないで日本国内に感染者が滞在している可能性も否定できません。

実は、先週、福岡出張時に、ホテルのエレベーターで中国人旅行者の方々の集団といっしょになりました。中国語での会話が飛び交う中に1人いて、新型コロナウイルスのことが一瞬頭をよぎり、1階に到着するまでの時間を長く感じました。ただ、会話が中国語だったというだけで、どこの都市から来た方々かもわからないのに…。

2002~2003年のSARS、2012年のMERSの流行の時とでは、明らかに、中国人の旅行者、滞在者の数が桁違いに多いのです。そして、その方々は、マンションの中にも数多くいらっしゃいます。先日、管理組合の役員の方から、中国人の方が所有していて、不特定の中国人の方が滞在しているとみられる状況があるが、親族や社員の方が使っていると言われたらどうしようもないか…と聞かれました。

中国の富裕層で、日本にセカンドハウスを持っていれば、新型コロナウイルスの感染を避けて、親族で日本に逃避していることも考えられる。その中には保菌者がいるかもしれないのに、マンションではそれに対応できないのか…と。

今後、新型コロナウイルスが国内で広がりを見せたら、私がホテルで一瞬頭をよぎったように、エレベータ─に住民ではない中国人の方と同乗することに不安を感じる方が出ても不思議はありません。ホテルは、宿泊者の住所等をチッェクし、それなりの対応を取れますが、マンションは、区分所有者が許可さえすれば、誰でも自由にマンション内に入れます。エレベーターや共用施設を利用することも可能です。管理組合には、どこから来た方かをチェックする権限もないのです。

マンションの危機管理の中で、伝染病対策は一番遅れています。まったくなさせていないといっても過言ではありません。何となくマンション住民の方が感じ始めている不安が杞憂に終わることを祈りつつ、やっぱり伝染病対策を考えることも必要だと感じています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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