【書評】意識高い系ほど騙される。今「ニセ医学」が蔓延している

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いわゆる「意識高い系」の人々の中に、ニセ医学を信じる手合が多いようです。さらに悪いことに、彼らの多くが周囲を「教化」しようと躍起になります。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では著者で編集長の柴田忠男さんが、ニセ医学の発信者や、その内容の信憑性の無さに警鐘を鳴らす一冊の本を紹介しています。

偏屈BOOK案内:桑満おさむ『“意識高い系”がハマる ニセ医学が危ない!』

81YXGs4hFfL“意識高い系”がハマる ニセ医学が危ない!
桑満おさむ 著/扶桑社

標準医療を否定して、矛盾だらけのトンデモ健康法に囲い込む「ニセ医学」がはびこっている。SNSで誰もが気軽に情報を発信できるようになり、それがカルト化しているようだ。著者が危ぶむのはネットを中心に広がる反医療の「マイナーなニセ医学」である。ニセ医学ハマリ度チェックをやってみたら、結果ゼロ。大丈夫、ニセ医学にかすりもしない。わたしはその方面には詳しい。

ニセ医学にハマっている人はヒステリックな自然派で、能力が低い人ほど自分を過大評価する認知バイアスが働く。これを「ダニング=クルーガー効果」という。自分が信じたものは正しいと固執し優越感を持ち、周囲に否定されても「正しいことを知らないのだ」と見下す。能力はないのに自己評価が高く、それを周りにも認めさせたい。「意識高い系」と呼ばれるタイプの人に多い。

「意識が高い」人は常に向上心や責任感をもち努力する人だが、「意識高い系」の人は、自分はメディアリテラシーが高く、能動的に正しい情報を入手できると考えている。彼らはマスメディアや一般的な知識を否定し、手に入れるのがネットの片隅に転がる陰謀論だったりする。そして周囲を同調させようとする。

ニセ医学の発信者は代替医療(自然療法など)を商売にする人や、目立ちたいトンデモ系ジャーナリスト、講演や自費診療で儲けようとする医者などである。彼らが発信したニセ医学を、自然派ママなど「意識高い系」がどんどん拡散させる。ニセ医学信者は「量の概念」が欠如しているくせに、数字を自分たちに都合よく利用する。天然は身体に良くて合成は悪いとは、イメージでしかない。

合成されたものを食べると身体に良くないという考えは、さまざまなニセ医学がベースになっている。酵素栄養学もそのひとつ。超トンデモ論論である。酵素はそもそも栄養素ではない。酵素食品と発酵食品は別物である。「意識高い系」が愛用している「EM菌」は天変地異も治せるらしい。彼らが広める「反ワクチン」もデマ。「ワクチン=自閉症」のインパクトは大きかったが大ウソ。

予防接種は個人防衛に加え「社会防衛」効果がある。必要な予防接種は社会全体で受ける必要がある。子どもの予防接種を拒否する親がいるが、それは保護者の選択であり、実際に被害を受けるのは子どもである。インフルエンザの流行時期に予防接種を受けることは、社会生活を送る上でのひとつのマナーであると著者は考える。激しく賛同する。ヘンな思想のバカ親には困ったもんだ。

世の中に、感染した方がよい病気などない。感染しないほうがよいからワクチンが作られる。反ワクチン運動は何のために行われているのか。代替医療や自然療法、スピリチュアルやオカルト系に導くためか。病気になったら、迷わず最も治療効果が高い標準医療を選ぶべきである。「転写」「波動」「共鳴」といった怪しい言葉を聞いたら、ニセ医学を疑うべし。最悪のニセ医学とは……。

それは「ガンは治る」である。著者は“沈むとわかっている藁をつかませる”ニセ医学を絶対に許さない。なかでも近藤誠医師の「がん放置論」は、がんは放置すべきという結果を支持するために、データを切り貼りしていると喝破。「具合が悪いときには、自由診療ではない医者の診察を受けなさい」「ネットの反医療論はどれも信じなくてよい」。ナイス、ニセ医学バスター。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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