いじめ隠しで高裁から賠償を命じられた小学校が少女にしていた事

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勇気を振り絞りいじめ被害を訴え出るも、頼れるべきはずの担任や校長がいじめの事実すら認めず隠蔽の方向に走ったとしたら、その心的ストレスは計り知れず子供の一生を左右しかねません。こうした学校や教師による「いじめ隠し」を無くしていくことはできないのでしょうか。今回の無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、1月23日に東京地裁が府中市に下した判決を紹介しその意義を評価するとともに、全国の教師に対して適切な指導を求めています。

いじめを闇に葬った学校に賠償判決

1月23日、いじめを隠蔽したとして、東京高裁が府中市に対して賠償を命じたというニュースが流れました。学校の「いじめ隠し」に対しての大きな前進と言えます。この裁判は、東京都府中市の小学校に通っていたときに、いじめを放置されPTSDを発症したと現在20代の女性が府中市に損害賠償を求めた裁判です。判決ではPTSDといじめの因果関係を認め「校長が中心となっていじめ問題を封印して闇に葬った」と指摘しています。報道によると、小5のころから同級生らから殴る蹴るなどの暴行や、靴を隠されたり、バケツの水を浴びせられたり、さらには、強制わいせつ罪に当たるような行為もあったとされています。当時、校長やクラスの担任は、医師からいじめが原因だと説明を受けましたが、「ふざけ合っていた」などとし、いじめと認めなかったことがわかっています。

大切なことは、東京高等裁判所が、「いじめを闇に葬った」としていることです。野山宏裁判長がここまで明確に学校による「いじめ隠蔽」を指摘している点は評価できるのではないでしょうか。この高裁の判決は「判例」として残ることになりますので、いじめに対する学校の対応に大きな警鐘をならしたと言えると思います。

ただここまでくる過程で残念なことがいくつかあります。まず、第一審の東京地裁立川支部は、学校側の言い分を認め「小学校側はいじめを知らなかった」として請求を棄却しているのです。医師が学校に「PTSDの原因がいじめである」と説明していたにもかかわらず、学校は「知らなかった」と突っぱねていたわけです。子どもたちに「嘘を付くな」と教えている教師が公の場で嘘をつくなど、あってはならないことですが、この学校は嘘を突き通すつもりであったとしか考えられません。また、この裁判は「小学校」を訴えたのではなく「府中市」を訴えているのです(小学校を訴えることは法律上できませんが)。つまり、学校だけでなく、学校を指導するべき「教育委員会」にも「いじめ隠蔽を指揮」していた可能性も捨てきれません。本来、いじめの隠蔽をした学校や教師に対しての「懲戒処分」は法制化されるべきものだと思っています。現在、いじめ防止対策推進法に教師の懲戒が明記されていないことが、「いじめ隠蔽」を招く温床になっていると言えます。

この事件でも、小学5年生の時に、当たり前の「いじめを解決する」という対応をしていたら、こんなにも長期に渡る後遺症で苦しませるようなことにならなかったはずです。その意味では、賠償額は「安すぎる」のではないでしょうか。その後遺症の中で、ここまで裁判を戦ってきた勇気と忍耐に敬意を表したいと思います。

やはり、だいじなことは「いじめの早期発見、早期解決」です。私たちのところに入ってくる相談の中には、素晴らしい先生の対応のもとで「いじめが一日で解決した」という事例もかなりの数あります。

先生方には「学校の名誉を守る」とか「自分の出世に響く」とか、「加害者の親への配慮」とかを優先して欲しくありません。その気持ちがあるから「私が見ていないのでいじめではありません」、「加害者の人権もありますから、叱るわけにはいきません」、今回の学校のように「ふざけ合っていた」などの戯言としか取れないような言葉が出てくるのです。いじられている子の辛さや悲しさ、苦しさが、「理解」できないからでしょうし、あるいはそれに「目を瞑(つむ)っている」のでしょう。

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