【記者からの質問と西浦先生の回答】
「夜の接待飲食店という特定業種に絞った根拠は?」
- 行動履歴は東京都での積極的疫学調査に基づいているので、確実にここで感染したという瞬間自体は見られない。しかし、行動履歴を聞く限り他の店には行ってないケースや、夜の街で複数軒の場所に行かれている人が多い。
- 繰り返すが、接待飲食業で、夜間から早朝にかけて集中しているのが特徴。
「パチンコや、マージャン店、性風俗などでの感染が疑われる事例は?」
- パチンコ、麻雀などの遊戯場での報告は今のところない。性風俗に関しても東京都内では報告はない。他の都市では疑われる事例がありそうという情報はある。
「今後の感染爆発の兆候を早めにつかむには、具体的にどういった調査をすべきか?」
- 感染者数を固唾を飲んで見守っているが、現時点で感染者数の爆発的な増加が本格的に始まった証拠はない。夜の街での伝播、特定の業種での伝播を止めれば制御できる可能性があるデータと判断している。
「今までどおりのPCR検査を行っていくということか?抗体検査のような大規模な調査を行わないのか?」
- PCRの患者数は、全感染者中の氷山の一角でしかないが、爆発的な患者数の増加がない、蓋然性が高いことを僕たちで確認している。
- 抗体調査は、人口の何%が感染してるのかをリアルタイムで理解するために実施するもの。今警戒すべきは2~3日ごとに倍々で感染者が増え始めていないことをしっかりと確認し、もし増えているということがあれば、速やかに対策を実施する必要がある。
- 例えば、帰国者・接触者相談センターを通じて受診した外来患者数を見ると、発熱し電話相談をして受診した人の数が診断される前の段階で見られる。それが増加傾向にあるかどうかが見られるし、他にも多角的なデータを使って確認しつつ、その報告をする。
【記者からの質問と大曲先生の回答】
※大曲先生は国際医療センターの医師
「そもそも軽症・重症の基準はなにか?」
- 基準の決め方で数が全然違ってくるのでとても難しい問題。あくまでも私個人の意見ということで聞いて欲しい。
・症状でいえば、微熱が出る、喉が痛い、ちょっとせきが出る程度にとどまり、なおかつ呼吸が苦しくない、酸素の量に異常がない場合は軽症、あるいは中等症。 - ただし、高齢の人の場合、状態が悪くなる可能性は多少高めなので、慎重に判断をする。
他にも色々ありますが、SNSやワイドショーがこぞって批判している点のみを今回は取り上げました。
このように専門家の先生の話を聞くととても腑に落ちます。ひとつひとつが確固たる根拠に基づいているからです。
そして、先生たちはそれを「根拠」にしながらも「完全」ではないという謙虚さを大切にしています。白と黒、黒とグレー、できることできないこと。そのすべてを「自分の言葉」で発信しているのです。
ところが、それらが政治家や役人の「言葉」に変わると、たちまち「信頼できない情報」になってしまうのが、残念でなりません。
リスクコミュニケーションの不完全性が、さまざまな憶測や不信感につながるということ、メディアや政治家はもっと気に留めて欲しいと思います。
リスクコミュニケーションについてはこちらに書きましたので、ご確認ください。
みなさんのご意見もお聞かせください。
image by: Camillo Cinelli / Shutterstock.com
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2020年4月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
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