化粧品が40%を占める「マツモトキヨシ」
マツモトキヨシはプライベートブランド開発を行い、差別化を行ってきました。それがはっきりとセグメント別売上高に反映。化粧品が40%を占めています。この部分を支えてきたのがインバウンド需要です。今回のコロナショックにより、この部分に影響がダイレクトに出ているのです。
マツモトキヨシのプライベートブランドは、包装デザインや機能を重視した医薬品や日用品の「matsukiyo」、化粧品「アルジェラン」など、ラインナップを拡充させてきました。今や、同社のプライベートブランドの売上高構成比率は11%にまで成長しています。対する、ウエルシアHDのプライベートブランドは5.6%、ツルハHDは6.4%です。
そして、特に驚いたのは、その品質です。matsukiyoが開発した保湿クリーム「ヒルメナイド油性クリーム」は、皮膚科で処方してもらえる「ヒルロイド」と同成分が含まれています。ヒルロイドは美容目的で一度に50本以上処方されるケースもあり、現在、厚労省が保険適用外の検討をしているほど人気ぶり。このヒルロイドと同じ成分のものを、マツモトキヨシはプライベートブランドとして開発しているのです。
その背景にあるのは、アジアからの訪日客も含めた延べ6千万人超の顧客データを徹底的に分析していること。今後、このインバウンド需要の落ち込みがどの程度回復するかがカギとなりそうです。
「モテる」ココカラファインの特徴
ここ数年、ドラッグストア業界では業界5位のマツモトキヨシと業界6位スギHDのココカラファインをめぐる争奪戦が話題になりましたが、軍配はマツキヨHDにあがりました。今後はその影響が大きく出てくるでしょう。では、なぜココカラファインはこんなに「モテる」のでしょうか。
理由は大きく3つあります。
1つ目は、調剤薬局の店舗比率。
ココカラファインは、ドラッグストアの中でも調剤の比率が高いことで知られています。一方、マツモトキヨシは、プライベートブランド開発にあたり、二千数百万人の会員情報を活用していることでも有名です。マツモトキヨシは、自社が持つ顧客データと、ココカラファインの調剤を組み合わせてシナジーを起こそうとしているのです。
2つ目は、展開エリア。
ココカラファインは関西地方に強く、マツモトキヨシは関東が地盤。互いに補完し合える関係です。これならカニバリズムが起きません。西のココカラ、東のマツキヨ。マツキヨが成長を狙うならばどうしても欲しかった理由がわかるでしょう。
3つ目は、総合力強化。
マツモトキヨシは、プライベートブランド商品の取り扱いを自店舗に限らず、食品スーパーなど300店に供給しています。ドラッグストア業界において、今後生き残る道は、総合力を身につけるか、特化型になるかですが、マツモトキヨシは総合力を高める方向で進んでいます。
調剤薬局もでき、プライベートブランドで差別化ができ、食品分野へも進出する。このように総合的に戦える手段を持てば、店舗の大型化も進めやすくなります。これを備えているのがココカラファインだったのです。マツキヨはここから、売上高1兆円企業となり、販売力を加速させることになるでしょう。
ドラッグストアは3強時代へ
マツモトキヨシ無事に王者に返り咲くことができるのでしょうか?まさに3強の時代に突入のドラッグストア業界。市場規模7兆円を超え、戦国時代のドラッグストア業界を生き抜くのは、どの企業なのか?そして、新型コロナウイルスによる大打撃に打ち勝つのはどこなのか?それを今後もきちんと見守っていきたいと思います。
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