バイト先はクラスター病院。コロナ疑いでPCR検査前に書いた遺書

 

ネタ稼ぎに絶好のバイトだったが

おっと!評論ばかりしてる場合じゃない。かくいう私も、コロナのせいで本業・副業ともに大打撃を受けている一人である。私の本業は、漫画の原作者・シナリオライターであるが、おかげさまで(!)取引先出版社が、軒並み発売中止・延期・廃刊となっている。

元気なのは、電子配信コミック部門だけだ。「週刊少年ジャンプ」「ザ・テレビジョン」という、日本を代表するような雑誌すら発売停止状態では、作家の端くれとして手垢のついた表現は使いたくないが、わたしの語彙には「死活問題」しかない。いくら書いても掲載・発売されなければ、我々フリーランスには一銭も入って来ないのだ。

さらに、この状況を何とかすべく始めた副業、バイトにも大問題が生じた。コレが今回の本題だ。

本業の減収分を補うため、午前中だけ5時間・週5日のバイトを3月から始めたのだが、先日、所属会社が出入り先からの事業撤退を決めた。つまり、全員、解雇である。だが、これで良かった。事業撤退を決定した社長はじめ、経営幹部たちは優れていると思う。

私の勤務先は、全国に多数の病院、福祉施設を有する日本最大級の○○○グループの□□県支部・□□県○○○総合病院であった。

当然、書くことしか能がない私に医療の資格などあるわけがない。具体的な仕事内容は、担当病棟の全30病室を回り、リネン類や消耗品類の数量をチェックの上、足らない数を補充してゆくという単純作業。無資格で誰でも出来る業務である。

実は、病院でバイトしたのには理由がある。間もなく電子配信予定だが、今回、病院を舞台にした心霊漫画の連作が決定しており、単行本化も確定した。少しでも現場を見て、看護師や患者らから情報を得て、漫画原作の材料にしたかっ
たのだ。

「給料もらって、ネタももらって、できれば可愛い看護師もいただく」のが目的だった。残念ながら可愛い看護師は得られなかったが、ネタはずいぶん稼がせてもらった。

やはり、漫画にしろ記事にしろ、現場を体験するのが一番良い。ネット情報だけに頼るライターで、成功しているヒトを私は知らない。人間関係にも恵まれた。本業でしっかり食える状態に戻るまで、続けようと意気込んでいたものだ。

クラスター(集団感染)病院からの撤退

だが、4月に入って状況は一変どころか激変する。恐れていた最悪の事態「院内感染」が発生してしまったのだ。コトの発端は4月初旬、医師1名のコロナ感染が確認されたこと。そこから先は、入院患者1名感染、4月15日には看護師5名感染、さらに後日、看護師1名感染と続く。

まさにクラスター状態。病院は、外来・新規入院患者受け入れ・救急受け入れをすべてストップした。手術の延期も相次いでいる。地域の中核病院としての機能は完全に失われた。

この事態に、私の所属会社(私たちは、病院の正規直接雇用ではなく、あくまでも出入り業者。元々、この○○○系病院は直接雇用をほとんどせず、受付嬢や事務員、看護師も外部からの派遣が多く、医師までもが「ドクターバンク」からの非正規雇用が目立つ)が、この病院からの事業撤退を決めた。

社長の「大切な従業員を、こんな危険な環境に置いておけない」という言葉にはシビレた。これほど清々しい解雇も珍しい。

知り合いの看護師によれば、現在も倍々ゲーム的に感染者が増加していると聞く。ずいぶんと恐ろしい現場で働いていたものである。だが、「辞めて終わり」ではない。実は、最初に出た入院患者のコロナ感染者、その後の看護師感染者のうち2名が、私の担当フロアから出たことを後に知ったのだ。

つまり、私は完全な「接触者」。コロナ感染者3名と毎日一緒に居たわけだ。特に患者はマスクなど着けているわけもなく、大いに飛沫を浴びていた可能性がある。あの患者とは随分と会話していたことを思い出し、嫌な汗が出る。

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