バイト先はクラスター病院。コロナ疑いでPCR検査前に書いた遺書

 

保健所という絶大な権力

病院を去って数日後。不安で何も手に付かなかった私は、ダメ元で保健所に「PCR検査」を願い出た。ダメに決まっている。この特殊な検査を受けるには、数々のハードルがあることは誰でも知っている通り。

私は「37.5度以上の熱が4日以上続いている」わけでもなく、「咳で呼吸が苦しい」わけでもなく「止まらぬ咳で呼吸困難」でもなく(それどころかタバコをスパスパ)、「倦怠感で起き上がれない」わけでもなく、海外から帰ってきた者でもない。

つまり、何でもない。こんな人間が、試薬に限りがあり、マンパワーも不足している巨大な壁「PCR検査」の対象になるわけがないのだ。条件を満たしていても「様子を見るように」指示される、巨大な壁なのだから。

だが、「○○○病院勤務」という経歴が効いた。抜群に効いた。院内感染は、まず保健所への報告が義務付けられている。隠蔽しようとしても、天下の保健所には絶対敵わない。

○○○ホームページにも、「保健所からの指導の下、院内感染拡大防止に努めます」と記載されている。つまり、保健所は、私の働いていた職場がいかにヤバいか充分にわかっているのだ。

「○○○病院で働いてらして、コロナ感染者と接触してらっしゃったんですね。上に相談してすぐ折り返し、お電話差し上げます」と言われた10分後「コロナ外来を臨時設置している、市運営の医療センターに予約を入れます」と来た。

え?検査してもらえる可能性があるのか?理由は「○○○病院勤務だったから」だそうだ。改めて、「そんなマズいトコにいたのか」と恐怖を覚えた。

余談である。結果通知の際もそうだったが、保健所の職員というのは、なぜ、こうも丁寧で感じが良いのか?誰が電話に出てもハズレなく、極めて感じが良い。こちらが恐縮するほどだ。お上感ゼロ。こちらがお世話になるのに、なにゆえ低姿勢?電話対応のお手本として、全国のバカみたいな対応しかできない民間企業に研修をお願いしたい。

完全に危険人物扱いでいきなりPCR検査

さて、紹介されて訪れた医療センター。直に病院に入ることを許されず、駐車場から電話するよう、病院側から指示されていた。「○○○病院勤務だった方ですね?」と確認された後、何と、医師との問診は電話!相当、私との接触時間を減らしたいようだ。

長々と電話で話した後、原発作業員さながらの格好をした看護師が、駐車場まで迎えに来た。しかも、一緒に歩きながらも、めちゃくちゃ距離を取る。ココで、「ソーシャル・ディスタンス」要る?何のための防護服なのか聞きたい。

案内されたのはビニールずくめの物々しい雰囲気の診察室。医師の格好は、看護師を超える重装備。私は、完全に危険人物扱いである。

本来ならば、この後、血液検査・肺のCTを撮って、肺炎の兆候があればPCR検査という流れだそうだが、「○○○病院勤務なら、必要ない」と、前段階をすっ飛ばして、いきなりPCR検査と相成った。採血が大嫌いな私からすれば嬉しい上、PCR検査に辿り着けない可能性が消えた。CTを撮ったところで、肺炎の徴候などあるはずがないからだ。

だが、「どうせ陽性に決まっている」という雰囲気には、確かに事故を起こしたが、お世話になった○○○病院への差別・偏見すら感じて気分が悪かった。

それにしてもPCR検査は辛い。インフルエンザ検査よりも、さらに奥の裏側まで突っ込まれ、グリグリやられるのは堪らない。その場で吐いてしまう人もいるというのも頷ける。

「先生、PCR検査って、結構キツイですね」と振ってみたが、私の感想などには一切応じず、「検査結果は保健所から連絡が入るので、後は指示に従って下さい」と早口で説明したあと、看護師に手を挙げて何やら合図。

それを見て、「はい、以上です!待合室へ!」と、半ばつまみ出されるように診察室を追い出され、隔離待合室に放り込まれる。会計も、離れた椅子の上のトレーに置けという。コロナ容疑者は悲し過ぎる。

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