検察庁法改正問題、見出しだけでなく記事まで政府を擁護する読売

 

保身に走る政権

【東京】は1面トップと5面の社説、20面21面の「こちら特報部」、22面社会面。見出しから。

(1面)
週内採決 自民が方針
定年延長 野党「コロナ悪用」
首相「恣意的 当たらない」
ネットデモ拡大 法相不在で審議

(5面・社説)
ツイートの抗議に耳を

(20面・21面)
ツイッターデモ 政治・社会 動かす?
470万件「#検察庁法改正案に抗議」
著名人の投稿 続々
途中で減少も 「世界記録」か
コロナ禍で「政治不信」うねり
「筋通らぬ違法行為」憤り可視化
沈黙NO 誰であっても発信OK

(22面)
「政治的中立性 脅かされる」
検察庁法改正案 日弁連が抗議声明

●uttiiの眼

《東京》の最大の特徴は、「ツイッターデモ」とか「ネットデモ」という言葉を当然の如くに使用している点。コロナ禍の最中で街頭に出て集まることができない怒れる市民が、ネット上で巨大な示威行動を起こしている点を重視している。

1面記事最後段には、立憲民主党などの野党が、政府が一体として提出している国家公務員法改正案などと検察庁法改正案を切り離すよう求めたのに対し、自民党が応じなかったため、安住国対委員長は「与党が修正に応じないなら法案の採決に応じない」と記者に語ったという。ここにも「強気の野党」の姿が出ているが、その背景にあるのは数百万の抗議のツイッターであることは見ておかなければならない。

「こちら特報部」は見開きで、このツイッターデモについて書いている。今回、芸能人や著名人がこの動きに加わったことについて。「芸能界では、政治的な発言はタブー視されがち。あつれきを起こしたくない番組のスポンサー企業に嫌われてしまえば、テレビに出演することができなくなってしまう」という。

だが、「今回はさすがにみんなの我慢の容量を超えちゃったんじゃないか。コロナのどさくさ紛れに検察権力を手中に収めようとする手法は『あまりにも姑息すぎる』」と(自らもツイートした落語家の立川談四楼さん)。記事の中には、きゃりーぱみゅぱみゅさん(ファンの間に賛否両論の激論が起こったことで後に消去)、小泉今日子さん(制作会社『明後日』)、浅野忠信さん、大久保佳代子さん、「大極宮」(作家の大沢在昌、京極夏彦、宮部みゆきの3氏が運営)のツイートが紹介されている。

ただ、ツイッター社は最高経営責任者が安倍首相と面会したり、日本青年会議所と情報リテラシー教育支援の協定を締結したりと、政権にすり寄る動きが顕著な会社。今回も、途中で「#検察庁法改正案に抗議します」のツイート数が突然数十万単位で減り、ツイッター社が削除したのではないかと言われている。政権からの圧力と取る人たちもいる。それでも、今回のツイート数(《東京》は470万件とする)は「世界記録」だという。

そして、今回、「新型コロナの問題を通じ、現政権が生活を守ってくれないと感じた人が多いはず。そんな中で『国民の生活よりも保身なのか』と怒りが向けられた」(「明日の自由を守る若手弁護士の会」の共同代表、神保大地氏)という見方を紹介している。

もう1点。今回、芸能人が多数この動きに参加した背景に、芸能界が「自粛」の影響を非常に強く受けた業界だったということがあるという。ライターの松谷創一郎氏によれば「芸能界は自粛のダメージが大きかった分野。ライブや収録が次々に中止となり、収入面で大打撃を受けた。にもかかわらず、政府の支援先は乏しく、政治不信が強まっている」と。そこに出てきた「不要不急」の法案に非難が殺到したということだ。

image by: 東京高等検察庁

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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