北朝鮮の金正恩委員長がしばらく姿を消したことで、重体説や死亡説などのデマが飛び交うことになりましたが、日本国内においてはそれほど北朝鮮の情報をキャッチすることは難しいようです。メルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』の著者で国際政治学者の浜田和幸さんは、そんな現状では、日朝二国間に横たわる問題の解決は望めないと、50年近く前に当時の都知事が平壌を訪ね、金政権の手腕を絶賛していた驚きの事実を紹介。いま敢えての平壌訪問を提案しています。
金正恩の脳死騒動の背景にある北朝鮮情報不足の問題点
ぶっちゃけ、北朝鮮に関する内部情報は日本にはほとんど入ってこない。そのため、金正恩委員長が2週間ほど姿を見せないと、アメリカのCNNが流した「重病説」を真に受けて、日本では「植物人間化説」や「死亡説」が飛び交った。
とはいえ、トランプ大統領は「金正恩は大の親友だ。元気なようで安心した。彼とはいつでも話ができる」と距離の近さを盛んに宣伝し、CNNの報道も「偽情報だ」と喝破していた。もちろん、表に出ないバックチャンネルがあるからだろう。
実は、国際的に孤立しているはずの北朝鮮は160を越える国々と国交を有している。ヨーロッパ諸国でいえば、フランス以外の主要国全てと国交を維持しているのである。強かな指導者を頂いているともいえそうだ。日本ともかつては緊密な関係を築いていた。
例えば、1971年、当時の現役の美濃部東京都知事が平壌を訪問し、建国の父である金日成主席と会見した。その時の記録を紐解いてみよう。
美濃部知事曰く「一昨日から工業農業展覧館、金日成総合大学など参観してきました。昨夜は歌と舞踊も見物しました。お世辞ではなく、金日成主席の指導されている社会主義建設に全く頭が下がるばかりで、感心しています」。
金日成主席曰く「ありがとうございます」。
美濃部知事曰く「資本主義と社会主義の競争では、平壌の現状を見るだけで、その結論は明らかです。これからもできるだけたくさん見て回り、非常に困難な状況にある東京都の建設に利用できるものを利用したいと考えています」。
全く驚くべきやり取りである。「平壌が東京都の建設モデルになる」ということを現役の都知事が北朝鮮の最高指導者に率直に語っているのだから。50年近く前の話ではあるが、当時の日本がそれだけ好意的に北朝鮮を捉えていた証に他ならない。
注目すべきは美濃部知事だけではなく、北朝鮮を礼賛する書籍は朝日新聞、毎日新聞をはじめ読売新聞や産経新聞からも出版され、紙面でも紹介されていた事実であろう。今とは雲泥の差であろうが、我々の北朝鮮を見る目はそれだけ極端に揺れるということでもある。
「三代目の肥満王子」のごとく揶揄されることの多い金正恩委員長だ。しかし、「核、ミサイル、拉致」問題を解決するには、経済制裁を10年一日の如く継続するだけでは全く効果がないことも動かしがたい現実である。
ぶっちゃけ、金正恩委員長の実相を含め、北朝鮮の実態を知るためには敢えて平壌を訪ねる深慮遠謀が求められる時ではないだろうか。
image by: shutterstock.com