角栄以来か。河井夫妻「立件」なら安倍首相が問われる「交付罪」

arata20200604
 

昨年7月に行われた参院選を巡る買収疑惑により、国会閉幕の17日にも「立件」と囁かれる河井前法相夫妻。そもそもその1億5000万円とも言われる「買収資金」は、誰がどのような判断で河井夫妻に送り届けられたのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党の資金の全ての動きを知るとされる人物の実名を上げるとともに、検察出身の弁護士が指摘する「党トップが罪に問われる可能性」、すなわち安倍首相に検察の捜査の手が及ぶ可能性についても言及しています。

河井前法相の買収疑惑はいよいよ自民党本部に波及か

いくつかのメディアの報じるところでは、河井克行・前法務大臣夫妻の公選法違反疑惑で、検察当局が自民党本部関係者への事情聴取をはじめたようである。

5月29日、テレ朝ニュースは「自民党本部の関係者」から任意で事情聴取したと伝えた。同じ日、時事ドットコムは「党本部を退職した元幹部職員ら数人」から任意聴取したと。

両方あわせれば、現自民党本部職員からOBにいたるまで、検察が積極的に接触しているものと想像される。いよいよ捜査は“本丸”をうかがい、外堀を埋める段階にさしかかったのだろうか。

いうまでもなく、本丸とは安倍官邸である。昨夏の参議院選を前に、自民党本部から1億5,000万円という大金が、広島県議から鞍替えする新顔の河井案里候補陣営に振り込まれた特別扱いは、河井候補に肩入れしていた官邸の関与抜きには考えられない。

同じ選挙区の自民党ベテラン、溝手顕正候補には1,500万円と相場通りだった。むりやり二人目の候補者として安倍官邸が押し込んだ河井案里氏は、その10倍。

潤沢な資金を手にした案里氏の夫、河井克行前法務大臣は、妻のために東奔西走した。広島県内の首長や地方議員、後援会幹部ら数十人にカネをばらまき、その総額は1,000万円をこえるのではないかという。

ウグイス嬢を集めるために法定の2倍もの報酬を支払い、案里氏の公設秘書と選対事務局長、克行氏の政策秘書が逮捕された。これは捜査の入り口であって、ゴールではない。

誰の力が働いて1億5,000万円もの破格の選挙資金が自民党本部から、ただ一つの陣営だけに投入されたのか。その黒幕こそが検察の真のターゲットであるはずなのだ。

河井陣営が地域の有力者に次々と買収工作をしかけ、「自民候補2人当選を」のスローガンなど、どこ吹く風の選挙戦で、溝手候補を沈没させてしまう結末は、その黒幕であれば、当然、予測できただろう。

黒幕の正体を知る人物を想像するのは容易だ。自民党本部の政治資金を実際に動かせるのは誰かを考えればいい。政治資金収支報告書の会計責任者は二階幹事長でも、実務にあたっているわけではない。

検察当局が事情聴取した自民党本部関係者のなかに、党事務総長、元宿仁氏が入っていないとしたら、ポイントがズレている。党の資金の出し入れは、この人を通さないとできないだろう。

自民党の政治資金を全て知る男。すなわち、政治の裏側を誰よりも見てきたのが元宿氏といえる。なにしろ、2000年以降、ある一時期を除き、自民党本部の事務方トップとして君臨してきたのだ。

幹事長は次々交代するが、汚れ仕事にもかかわる事務方のトップともなると、そうはいかない。まずなにより、口が堅いことが必須条件だ。やすやすと代わりの人材は見つからない。

さきほど「ある一時期を除き」と書いたが、実は元宿氏は民主党政権の誕生後にいったん自民党本部を退職し、安倍政権の復活後に呼び戻された経緯がある。安倍首相にとって、この人も「余人をもって代えがたい」のだろう。

党職員でありながら、退職のさいには新聞記事になった。筆者も2010年8月3日のブログ「永田町異聞」でこう書いた。

自民党の裏側を知り尽くす男が、7月31日付で退職した。この10年間、党事務のトップをつとめてきた元宿仁。64歳。もともとの肩書きは事務局長だったが、定年延長で事務総長となった。党職員でありながら、その退職が新聞記事になるのが、なにより政界における存在感を物語っている。

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