元国税が暴露。電通「中抜き」問題と官僚天下り問題との深い関係

 

そもそもなぜ給付金業務を民間に委託するのか?

持続化給付金に関しては、「そもそもなぜ国の事業である給付金業務を民間企業に委託するのか?」という大きな疑問があるはずです。

こういう国の業務を民間企業に委託すると、個人データを民間企業に流すことになり、様々な問題が生じるのです。特に、今回の持続化給付金などはそうです。持続化給付金というのは、経営状態が悪化した事業者が申し込むものです。当然のことながら申請する際には、経営内容を記した書類を提出しなければなりません。電通やパソナなどは、日本全国の「経営が悪化した事業者」のデータを入手できるわけです。国の委託業務を受けた企業には一応、守秘義務がありますが、取得したデータをこっそり使っても、外部からはばれようがありません。

また電通やパソナは、持続化給付金業務に適しているとは決して言えません。彼らは各事業者の経営データを持っているわけではないので、もし事業者が本当は給付対象者ではないのに、適当に資料を作成して申請しても、それを見破る術がありません。おそらく、相当な数の「不正受給」が発生しているはずです。

国には大量の公務員がいるわけですし、国が自分でやろうと思えばやれるはずなのです。というより、本来、国がやらなければならない業務なのです。

しかも、国にはそれだけの人員がいるのです。百歩譲って、経済産業省にはその能力がないとしても、国家公務員全体を使えば簡単に可能なのです。

たとえば、国税庁を利用すれば、電通やパソナなどの委託するよりはるかに安全でスムーズに業務が行えたはずなのです。国税は日常的に税金や還付金の振り込みを行なっているので、各事業者の銀行口座なども把握しており、支給もスムーズに行えるのです。

また国税庁はもともと各事業者の経営データなどは持っていますので、申請内容をスピーディーにチェックできますし、不正の申請を見破ることも可能です。

国税庁には全国で5万人の職員がいます。現在は国家の一大事なのですから、そのうち5,000人を新型コロナ給付金業務に割いたとしても、まったく不自然ではないはずです。国税職員5,000人が一人あたり1日20件の審査業務をすれば、1日で10万件の給付金支給が可能になるのです。

国税庁の仕事の3~4割は税務調査であり、税務調査というのは削減しようと思えばいくらでも削減できるのです。また最近は新型コロナの影響で税務調査はあまりできていないはずです。不要不急の外出の自粛要請がでているとき、国税もそうそう税務調査に行くわけにはきませんし、経営が悪化している事業者が多いので、こんなときに税務調査を行うと国民に反感を買うのです。つまり、国税庁から人員を何割かほかの業務にあたらせることなど、まったく造作ないのです。

しかも、彼らは国家公務員なので、事務委託費などまったく不要です。つまり、電通などがうけとった769億円の事務委託費は、本来まったく不要なものだったのです。

が、官庁には、そういう発想は絶対に出てこないのです。給付金は経済産業省が主導で行われることになっており、「経済産業省の縄張り」となっているのです。これを国税庁に依頼すると、自分の縄張りを他省庁に取られることになりますので絶対にやらないのです。

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