元国税が暴露。電通「中抜き」問題と官僚天下り問題との深い関係

 

「国の業務委託」は官僚の利権の温床

本来、国がやるべき仕事を別の団体に委託し利権を確保するという手法は官僚の常とう手段でもあります。

今回の持続化給付金の委託問題については、新型コロナという世界的な災厄でのことであり、世間が関心を持っていたので「発覚」ということになりましたが、国の事業ではまだ発覚していない「委託問題」が腐るほどあるのです。

たとえば、「国民年金基金連合」という団体があります。これは、自営業者向けの公的年金である「国民年金基金」を取り仕切る団体です。そもそも、自営業者の公的年金を扱うのならば、厚生労働省が直接行えばいいはずです。

なのに、なぜ「国民年金基金連合」という団体をかませるかというと、天下り先を確保するためなのです。そして、この「国民年金基金連合」は、「国民年金基金」だけではなく「確定拠出年金」にも携わるという形を取り、国民の社会保険料から手数料という名目で莫大なピンハネをしているのです。現在、国のあらゆる業務に関して、こういう利権が張り巡らされているのです。

「官僚を優遇する企業に国の美味しい仕事を与える」というわかりやすい腐敗の構造。実は現在の日本はこういうのばっかりなのです。元官僚として、筆者はこういうのを嫌というほど見てきました。こんなひどい状態なのに、日本はよく国として成り立っているなと思うほどです。おそらくその他大勢の国民が、必死で頑張っているから、日本は崩壊せずに持ちこたえているのです。

しかしこんなに腐敗した構造では、社会がまともに維持されるはずはないのです。我々の生活にも影響は出始めています。

日本人の多くは、日本の社会インフラは世界の最先端だと思っています。が、それはバブル期くらいまでのことであり、昨今では世界的に大きく遅れをとっているのです。

今回の新型コロナ禍により、「日本は集中治療室(ICU)が先進国の中で著しく少ない」ということが取り沙汰されました。が、少ないのは集中治療室だけではありません。日本では、国公立病院が異常に少ないのです。日本の病床数の約80%は民間病院にあり国公立病院の病床は約20%しかありません。これは先進国としては異常なことです。イギリス、ドイツ、フランスなどの先進国ではほとんどが病床の半分以上が国公立病院なのです。

国公立病院が少ないと、必然的に新型コロナなどの感染症患者を受け入れてくれる病院が少なくなってしまいます。こういう患者が入ってくると、ほかの患者が来なくなるので民間病院は受け入れたがらないのです。だから日本では新型コロナ患者が増えればすぐに医療崩壊する危険がありました。そのためPCR検査を極力減らして「患者をいなかったことにする」という姑息な手段を取ったのです。

日本の社会インフラがボロボロなのは、医療だけではありません。教育もそうです。新型コロナ禍により、学校の現場ではオンライン授業を行なおうとしました。が、教育現場でのIT化が遅れていたため、小中学校でのオンライン授業は非常に困難を極めました。小学校でのパソコンの普及率は、OECDの中で日本は最下位なのです。日本では少子高齢化で、子供が少なくなっているにも関わらず、この体たらくなのです。

他にも日本の社会インフラが遅れている部分は数え上げればきりがありません。しかも、社会にとって根幹となるインフラ整備がお粗末なのです。たとえば、日本の地方都市の下水普及率はアフリカ並みなのです。下水というのは近代的な生活を送る上で基本中の基本のインフラです。それがまだ50%以下しか普及していない地域がざらにあるのです。

また電柱の地中化率も、先進国で最悪レベルです。日本人は、町中に電柱があることを当たり前のように思っていますが、先進国では、電線は地中に埋められているのです。

地震や台風などの災害の多い日本こそ、電線の地中化を先駆けてやらなければならないはずなのに、です。

日本は予算が少ないわけではありません。日本は世界最大といっていいほどの公共事業大国であり、GDPに占める公共事業費の割合は先進国では断トツの1位を長年続けてきたのです。「莫大な公共事業費を一体なにに使ったのだ?」「公共事業大国の下水普及率が途上国並みってどういうこと?」ということです。

それもこれも、税金がいたるところで官僚たちによって中抜きされ、まともに社会のために使われていないからなのです。それが、今回の新型コロナ禍であぶりだされてきたのです。

ここまで読んでくださってお疲れ様でした。これを読むのは、本当にシンドイことだと思います。書いている私自身、気分が悪くなるほどですから。

でも、日本人としてこういう事実に目を背けてはならないのです。次回は、これだけ批判されているのに、なぜ官僚の天下りがなくならないのか、その驚くべき裏事情についてご説明したいと思います。

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image by: , CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

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