「どんなときもWi-Fi」の行政指導に見る、無制限使い放題のワナ

 

KDDI株主「ローミングで楽天とソフトバンクに対抗する気ある?」――ユーザーに知られていない「世界データ定額」

6月17日、KDDI「第36期定期株主総会」が開催された。NTTドコモ同様にコロナ禍により規模を縮小しての開催で、プレゼンテーションおよび事業報告を割愛。40分ほどで終了となった。

プレスルームも開設されなかったので、大阪・オプテージビルの前にあるタリーズでネット中継を取材した。

質疑応答の中で気になったのが、国際ローミングに関しての質問だ。株主からは「楽天モバイルは特別な契約、追加料金がなくても世界中でローミングができる。ソフトバンクはアメリカ放題など追加料金なしでアメリカ国内でローミングできている。KDDIの対抗策はあるか」というものだった。

この質問を聞いた時、なんとも残念な気持ちにさせられた。客観的に見て、国際ローミングサービスで頑張っているのは4キャリアの中でもKDDIではないか。最近もサービス内容を改定し、24時間単位で使いやすく、数日間の使い勝手も良くなった。ステージ制により、ステージが高ければ、ローミング料金もかからないなど、海外出張の多い身からするとかなり重宝している。

確かにアメリカに限ってはソフトバンクがダントツにいい。アップルのイベントなど、アメリカ出張中には日本国内にいるとき以上にメディアからの音声通話がバンバンかかってくるのだが、ソフトバンク回線であれば、どんなに長電話しようとも一切、通話料が掛からないので本当に助かっている。

ただ、ソフトバンクはアメリカならいいが、他の海外はさっぱりであり、いまだに24時間2,980円という高額な設定で使う気にもならない。その点、KDDI同様、NTTドコモも頑張っている。

楽天モバイルに関しては、正直、まだ判断に困っている段階。本サービスが開始になる4月8日以降、海外出張に全くいけていないので、評価のしようがない。ただ、2月にアメリカ出張した際には便利に使えた。自分はAQUOS Sense3 liteだったから良かったが、Rakuten Miniを持参してきた人はほとんど使えなかったようだ。サービスはいいが、端末がローミングに対応してなければ意味がない。

今回の株主から質問を聞いて感じたのが、KDDIのアピールが全くうまくいっていないという点だ。KDDIに興味があるはずの株主にさえ、KDDIのローミングサービスの利点が伝わっていない。

ただ、株主に限った話ではなく、一般ユーザーにもさっぱり広まっていないのではないか。コロナ以前の空港では、Wi-Fiルーター貸し出しの窓口には、出番を待っているWi-Fiルーターが山積みされていた。多くの人が「自分のスマホでパケ死するのが不安」とWi-Fiルーターを借りていくのだろう。

今のローミングサービスであれば、明らかに使い勝手はいい。自分のスマホがそのまま使え、Wi-Fiルーターを借りるお金も要らなし、わざわざスマホと別に充電する必要もない。

海外用Wi-Fiルーターのレンタルに需要があるということがさっぱり理解できないのだが、結局はキャリアのアピールが全くできていないということなのだろう。

image by: Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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