ではどうしてカビがはえないのか?
おかしいですね。添加物の毒性によってカビも生えない環境になっているように思えましたが、そうではなさそうです。
これは実は、カビないのは毒性などが理由ではなく、栄養面での話に理由があるからなのです。
もったいぶらずに答えを言うと、その配合がたまたまカビの生育環境に対して、強い抑制効果を持っているだけで、特別な添加物がカビを抑制しているとか、ものすごく強力な防腐剤が微生物を寄せ付けないわけではありません。どちらかというと、その商品としての機械的性質が理由といえます。
分かりにくいので説明していきましょう。
まず揚げ油は、植物油と水素添加油の半々であるところがまず大きな理由です。水素添加油とは、ショートニングやマーガリンと同じようなもので、その安全性についてなどは過去の連載でお話した通りです。
この硬い油は揚げたてではポテトの上で液体なので口に入れたときに大変口当たりがよく美味しく感じるのですが、冷えると急激にマズくなる性質があります。これはカビが生えない理由でもあり、この硬い油が、表面で冷え固まって一種の遮断層となるからです。
カビが生えるには水がないといけないのですが、この層にさらに塩が乗っていることから、カビが好んで分解するには難しい環境になっており、さらに酸化防止剤がこの油の分解を阻害し続けるのでバリア効果が長く続き、そのうち中の水分がゆっくりと抜け、さらにカビにとって辛い環境になるためカビが生えないのです。
植物油のみで揚げたポテトは、時間の経過と共に中の水分が外に出てきてベショっとするため、そこを足がかりにカビが生えることができるだけです。
では安全なのか?
良い悪いの2次元論で物事を語ること自体が良くないことですが、あえて言うなら、良い食品とはいえません。
別にカビが生えようが生えなかろうが、加工工程でじゃがいものウリであるビタミン類は大半は溶出してなくなっていますし、二回も揚げられることで含まれる脂肪の量は膨大で、特に水素添加油を使ったものは、ポテトMサイズは牛丼一杯を超えるカロリーです(しかも牛丼に比べ栄養価はさらに低い)。
ニキビや吹き出物の原因になる原因の油でもあります。
そして強い塩味に、グルタミン酸などのうま味調味料ででっちあげられた味は、熱狂的なおいしさがあるため、こればっかり食べるようになってしまいがちです。
もちろん一回食べただけで有害作用なんてありませんし、嗜好品として「分かった上」で楽しむことは良いのですが、食事として置き換えるようなものではなく、嗜好品の延長線であることを忘れないように「楽しむ」というのが大事だと言えます。
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