科学者が解説。なぜファストフード店のポテトは長期間カビないか

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長期間カビが生えないとして、ネット上などで「危険な食べ物」と噂されているファストフード店のフライドポテト。果たしてそれは真実なのでしょうか。今回の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』では著者で科学者のくられさんが、その「論争」に終止符を打つべく、あくまで科学的に「フライドポテトにカビが生えないシステム」を解説しています。

腐らないポテトの都市伝説を斬る

ファストフードはジャンクフード、その添加物まみれの食べ物は、プラスチックのようなもので、そうした添加物まみれの油で揚げたフライドポテトは何ヶ月経ってもカビがはえない!なんて恐ろしいのでしょう…みたいなトピックがありますよね。

某ファストフード大手のポテトだけはカビないというトピックが「添加物は恐ろしい」といった話にまとめられている記事や画像がTwitterなんかで流れていたりします。

今回はそれを検証してみます。

揚げ油が問題?

まず、アメリカで公開された、問題の揚げ油の成分をおさらいしてみましょう。

植物油(なたね油、コーン油、大豆油)
水素添加油
tert-ブチルヒドロキノン
クエン酸
ポリジメチルシロキサン

化学に馴染みのない人がみると、たかがポテトフライの揚げ物にこんな得体の知れない横文字の化学物質が入れられていてコワイ!と思う人が多いと思いますが、そこで思考停止せず、「使われている理由」に迫ってみましょう。

まず、ベースになっているのは植物油と水素添加油です。こちらは遺伝子組み換えされたものが使われているとかいろいろな話がありますが、遺伝子組み換えした植物から得られた油に毒性があって人間に悪影響を及ぼすという話はかなりナンセンスです。

そもそも加工食品に使われているコーンスターチやガムシロップの類いにそうした毒が含まれているなら世界中で死屍累々です…がそんなことないですね(笑)。

というのも、毒性試験は製造しているメーカーだけでなく、政府のFDAだけでなくWHOなどの国際機関まで評価をしているからです。一部のアメリカの企業は政治力を異様に持つため、密かな毒性が伏せられているといった陰謀論がよく見られますが、アメリカ国内だけならともかく、世界全てに圧力をかけるなんて現実問題として不可能…といえます。

なんやかんや風評の悪いWHOですが、良くも悪くも世界中のデータが集められた上で「これくらいはOKやろ」という判断を出しているわけですから、強制力を持たないことから逆に支配的ではない組織ではあると言えると思います(最も、最近の感染症に関しては多少きな臭いのはありますがw)。

閑話休題。ただ遺伝子組み換え植物が環境に及ぼす影響はなんともいえませんが、少なくともそこから生産される、デンプンや油といったものに毒が含まれているというのは、少なくとも消費者としては気にしなくて良い物です。

水素添加油は、いわばマーガリンやショートニングといったものです。これらを作るときに、トランス脂肪酸が多く出来て、それを取り過ぎると健康を害する…というのは別の記事にもある通りです。

とはいえ、まったくの悪役かというとそうでもないね…というところは大事です。

ポリジメチルシロキサンは、シリコーンオイルの分子を加工して油が分離しないようにつなぐため、また食品同士がひっつきにくくなるために入っています。豆腐の剥離剤として、また腸内のガス生成を減らすための医薬品としても使われているので、添加されている量から考えても毒性は無視できます。

次に、ブチルヒドロキノンはアメリカではポピュラーな油脂の酸化防止剤で、ファストフードの揚げ油は、1週間以上フライヤーの中で食品を揚げ続けるものが大半なので、酸化し劣化するのを防ぐために酸化防止剤が含まれています。

ただしtert-ブチルヒドロキノンに関しては、日本では認可されていないので使われていないでしょう。代わりに日本ではBHA(ブチルヒドロキシアニソール)やBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)が使われております。

これらの物質はそれなりに毒性があり、故に毒性試験を徹底して行った上で添加量が決められている添加剤です。毒性があるものをわざわざ添加する理由は簡単で、添加することで油の酸化で生じる毒性の高い酸化分解物などの生成を阻害するためです。故に大きな毒が発生しないため小さな毒を無害量を調べて使っているわけです。

この毒としての見方をゆがめて「過去に~~という添加物の毒性を調べると、XXといった毒性が確認されている!」みたいな話になってくるわけです。

いずれにしても、これらの添加物は、決められた使用量では毒性なんてものは無く、むしろ油の酸化で生じた過酸化油脂や有害な分解物のほうは発がん性があるものが多いので、そうした味の悪い有害な物質が発生しないように添加されているだけです。むしろ企業努力の部分として見るべきところです。

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