嗤う中国。政治への無関心が、日本を「香港と同じ未来」へと導く

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市民らの激しい抵抗も虚しく、中国政府による「国家安全維持法」施行でその自由を奪われてしまった香港。習近平政権の「暴挙」は、香港以外に対しても振るわれる可能性はあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』では株式会社オンザボード代表の和田憲治さんが、このまま国民が国際政治に無関心のままでいるならば「中共の奴隷になる」とし、そのような状況を回避するため日本人として考えておくべきことを提示しています。

終わってしまった香港について

こんにちは和田です。

去年の秋、私は産経新聞の記事を引用して次のような出だしでメルマガを書きました。

豚になりたいですか?

 

こんにちは和田です。

 

ダイエットの話じゃありません。

 

9月28日土曜の産経新聞朝刊にありましたが、香港の記事で引用すると、

 

「高校生のセイカ・チョウ(18)さんは、『私はずっと豚だった』と、話す。豚とは香港の俗語で政治に無関心な層を示す。しかし、2014年の雨傘運動で考えがかわったという。『これまで豚だった人が目覚め始めた。豚のままでは中国の言いなりになる』」

 

豚とは、政治的に無関心な層……。

ここまでが引用で、ここから今回のメルマガに戻ります。昨秋のメルマガの引用の中に、産経新聞の記事の引用があったのでわかりづらくてすみません。

私は昨年も一昨年も香港に行き、民主化運動 vs 中共の香港の本土化侵略の戦いを奥山先生とKAZUYAさんと見てきました。3人ともに香港が大好きだったし、その地位が失われるのが惜しいし、香港人たちを応援したいと思っていました。

特に昨年は逃亡犯条例改正案で、急激な対立激化がありました。香港に行く度にその対立は激しさを増していきました。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、我々3人は取材しつつも逃げ遅れて、催涙弾が当たり、煙をモロに浴びてしまいました。催涙煙を浴びた直後に、目を洗う水をくれたり、我々に声をかけてくれた香港民主化運動の人たちは、優しくしてくれました。

「日本人か?迷惑かけるけど、ここからは先には入らないでくれ」とか、「取材して世界に配信して欲しい。でも、写真に映った顔はぼかしてくれ」というような声もかけられました。

そんな香港の人たちは、これまで「自分達は豚だった」と反省し、「もうこれからは豚ではいけない」と立ち上がったのでしたが、結果は、すでに手遅れだったのです。遅かったというか、そもそも強大なる中共が決めたら、もはや組織として地域として香港の民主化運動を続けることは事実上困難でした。

香港はいずれ言論の自由が奪われ、やがて民主主義もなくなり、大陸に飲み込まれる。そう見極めた人は、天安門事件の後、いろんな事件が起こるたびに、香港に見切りをつけて各国に移住していきました。近年では2014年の雨傘運動もありました。

私は、香港を見限るチャンスはいくつもあったのに、そこで国外脱出を判断しなかった人たちに興味がありました。私が見ていて思ったのは、彼らは中共の支配する中国大陸にアイデンティティを感じない。自分たちは中国人にはなれない。全く別の自由な「香港人」だと気づくのが遅かったのだと思います。決して中国人にはなれないと気づいたからこそ戦っていたのです。それでも、香港に住み、中共の支配する大陸とうまく付き合ってきただけに、今後もうまくやれる、と思っていたと思います。

今回の運動をしていた香港人たちの第一の選択は、香港に残り民主主義を守ることです。香港そのものをそのままの状態で住み続けたいという願望はあったと思いますが、では、香港を守るために何が有効だったか?となると、やはり、わずかなチャンスはアメリカ政府への働きかけの一択しかなかったと思います。

しかし、カネに目がくらんだ米国、日本、EU諸国は、このコロナ前までは、香港の民主主義運動に興味がありませんでした。

私が香港人だったら、遅くとも雨傘運動の時点で、香港を出るための活動をしたと思います。これが第二の選択です。一旦、香港を離れるか、いつでも離れられる準備をしておくべきだったのです。

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