女子高生土砂崩れ死亡事故で痛感する、土地所有者に問われる責任

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以前掲載の記事「女子高生土砂崩れ事故で判った、手つかずの危険箇所と行政の後手」でお伝えした、神奈川県逗子市で女子高生が死亡した事故ですが、新しい動きがあったようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、新聞報道で明らかになった遺族による刑事・民事それぞれの告訴内容を紹介するとともに、敷地内や隣接地に斜面・擁壁がある建物の所有者に注意を呼びかけています。

逗子斜面崩落事故のその後、刑事も民事も動き出す

こんにちは!廣田信子です。

2月5日、逗子市の市道脇にある斜面が崩落。歩いていた高校3年の女子生徒が巻き込まれ、亡くなるという痛ましい事故がありました。

女子高生土砂崩れ事故で判った、手つかずの危険箇所と行政の後手

崩落した斜面の所有者は、その上に経つマンションの管理組合(区分所有者)ですから、その後、その責任の追及がどうなるか気になっていました。直後、責任云々の前に、まずは安全対策が必要と、市が安全確保のために現場斜面の応急工事を実施しました。今後の本格工事を含めた費用負担を、市と所有者(マンションの区分所有者)が協議することになります。

6月27日、28日の新聞報道で、遺族側が、

  • マンション管理会社、区分所有者を刑事告訴し、受理されたこと
  • マンションの区分所有者に対する損害賠償請求を行ったこと

が明らかになりました。

今回の事故の崩落原因については、現地調査を行った国土交通省国土技術政策総合研究所が3月に最終報告を発表しています。「水による流動・崩壊ではない」と指摘し、直接的な引き金は不明としつつ「地表面の低温、凍結、強風の複合的な作用で風化が促進された」などと結論付けています。

捜査関係者によると、事故前日、マンションの管理人が、斜面に数メートルのひび割れがあるのを発見し、管理会社に伝えていた…という事実があったといいます。これは、初めて知る話で、兆候もなく崩れた…のではなく、兆候はあったのです。

遺族側は、管理会社には適切な措置を講じなかった責任があり、住民らも安全管理を怠ったと…として、マンション管理会社の代表を業務上過失致死の疑いで県警逗子署に刑事告訴。マンションの区分所有者の住民を過失致死の疑いで刑事告訴。告訴は6月23日付で提出され、受理されました。今後、本格的な警察の調査が始まります。

また、民事としては、遺族は、区分所有者に対し、内容証明郵便(25日付)で総額1億1,800万円の損害賠償を求めたといいます。遺族側は、国土交通省国土技術政策総合研究所の調査結果を踏まえ、崩落が発生しないように安全性を確保するための斜面の管理がなかった結果、事故が起きたなどと訴え、亡くなった女子生徒が将来就労することを想定した逸失利益や慰謝料などとして総額約1億1,800万円の請求となっています。

約40戸のマンションです。法律上の責任は、各区分所有者にあるとしても、管理組合(理事長)が、代表して対応していくことになるのだと思います。補修工事の費用負担、刑事裁判への対応、損害賠償請求に対する対応(いずれは民事裁判に…)。遺族の立場になれば、責任の追及は当然でしょうが、管理組合、区分所有者の方々のことを思うと、たいへんだろうな…と思わずにはいられません。改めて、「所有者」が持つ責任の重さを、マンションの区分所有者は自覚しなければいけない…と知らされた出来事です。

今、全国で、豪雨が続いています。斜面、擁壁が、敷地内にあったり、隣接しているマンションでは、ぜひ注意をしてください。人の命にかかわる問題ですから、小さな兆候を絶対に見逃さないように…。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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