女子高生土砂崩れ事故で判った、手つかずの危険箇所と行政の後手

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18歳の女子高校生の尊い命が奪われた、逗子市の土砂崩れ事故。崩落した斜面の所有者は、その上に建つマンションの管理組合でしたが、なぜ長年放置されていたのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、全国に存在する「斜面・擁壁を抱えるマンション」に対し早急に進めるべき対策を記しています。

マンションの斜面崩落で犠牲者が…

こんにちは!廣田信子です。

2月5日午前8時ごろ、逗子市池子2丁目の市道脇にある斜面が崩落。そこを歩いていた高校3年の女子生徒が巻き込まれ、亡くなるという痛ましい事故がありました。崩落した斜面の所有者は、その上に建つマンションの管理組合(区分所有者)ですから、マンション管理関係者の間では、その話でもちきりでした。

報道されている内容をまとめると、崩れたのは1950~60年代に造成されたとみられる高さ約15メートルのマンション下の斜面で、下部の6~7メートル分は石積みの擁壁で補強されていて、その上の崩れた部分には擁壁はなく土のままで、最大で60度の傾斜があったといいます。その擁壁上のむき出しの斜面が幅約7メートル、高さ約6メートルにわたって崩落。その下を通る市道に重さ約68トンの土砂が降り注いだのです。

崩落した斜面は、崖崩れなどによって災害が起きるおそれがあるとして「土砂災害警戒区域」に指定されていました。擁壁のある土地は、その上に立つマンションの敷地(私有地)ですから、安全対策などはマンションの区分所有者(管理組合)が責任を持って行うべきこととなります。市は、5日午後にはマンション管理会社と面会し、現場の安全確認や今後の安全確保策を要望した…と。

思いもかけない事故に、住民や管理組合の理事長が受けた衝撃は、どれほどだったかと思います。若い命を奪ってしまった事故を、どう受け止めていいのか分からない状況ではないかと想像します。自分たちのマンションの安全性も不安です。

神奈川県の中でも、横須賀、逗子など三浦半島の地域は平地がないため、山を切り崩して宅地造成したところが多いです。神奈川県によると、去年の年末の時点で「土砂災害警戒区域」として1万466カ所が指定されているのです。この地域に伺うと、狭い土地にマンションを建設していて、擁壁の上や、擁壁を背負って、または斜面を利用して、建てられているマンションが多いことに気づきます。正直、大きな地震や集中豪雨があったら、ちょっと怖いな~と感じることもありました。

ネット上には、すでに、ストリートビューで、崩壊前の現地の様々な画像が上がっています。土木関係の方は、こを見て、「土留め石積みの角度が急勾配で高さも高過ぎる。石積みの上の法面も土がむき出しなのに勾配がきつい。本来なら建築許可がおりないのではないか」…と。

現在の神奈川県の建築基準条例では、近くに勾配が30度を超え、高さが3メートルを超える傾斜地があり、崖の端からの水平距離が崖の高さの2倍以内の場所に建物を建設する場合、斜面に擁壁を設けるなど、防災対策をとるよう定めているといいます。今回の逗子のケースは、そういった基準ができる以前からあった古い擁壁に、そのままマンションを建設したように見えます。基礎のくいの打ち方等で擁壁に負担を掛けないと認められると、それでもクリアーできてしまうというのです。

建築基準法は、建物の安全性を守ることを目的としているため、条例違反には当たらない…と県は言っているといいます。法的には申請が通るかもしれませんが、そんな事情をマンション購入者は知らない訳で、安全だと信じて購入しているのですから、ディベロッパー、建築会社の責任は大きいと思わざるを得ません。

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