モノ消費でもコト消費でもない。これからは「ヒト消費」の時代

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デフレの世の中で、日本はモノ余り時代になっています。わずか50年前はモノ不足だったわけですから、不思議なものです。モノに満足できなくなると、その次はコト消費になり、それにも飽きると結局はヒトとのつながりが重要になってくると語るのは、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。坂口さんは自身のメルマガ『j-fashion journal』で、ネットでも店舗でも、すべてはヒトとヒトの関係が基本になると解説しています。

モノ消費、コト消費からヒト消費

1.モノ不足とモノ消費

モノ不足時代は、モノが大量に陳列されているだけでワクワクしたものです。お金さえあれば何でも買える。まだ、自分のモノにもなっていないのに、自分が商品を所有したことを想像するのが楽しかったのです。

あれも欲しい、これも欲しいという時代でした。メーカーはあれも作りたい、これも作りたいと思い、小売店はあれも売りたい、これも売りたいと思っていたのです。

モノ不足時代はモノが主役です。どんなモノを作ればいいのか。どんなモノを並べればいいのか。どんなモノにニーズがあるのか、常にモノについて考えていました。

しかし、やがて需給バランスが崩れました。供給過剰となり、価格競争が始まります。安売り競争、バーゲン競争になって、商品に対する思いが変わってきました。欲しくなくなるのです。別に新しく買わなくても困らないという状況になると、モノばかりが並んでいる店には魅力がなくなります。

2.モノ余りとコト消費

モノ余り時代の到来です。その頃、百貨店等で言われていたのは「売り方の提案」であり、「売り場の提案」でした。最早、商品の提案にはニーズがなくなっていました。売り場の提案とは、売り場のデザインと、新たな販売方法やサービスを意味します。

モノ不足時代の売り場は、モノを購入することが目的でした。しかし、モノ余りの時代は、購入より体験が重要になります。買い物体験です。

商品が詰め込まれた倉庫のような売り場で買い物するのと、豪華なインテリアの中にゆったりと商品が陳列された店が買い物をするのでは、気分が全く違います。良い気分になります。

顧客は良い気分、良いコトにお金を払います。考えてみれば、美味しい食事をするのも良い気分になるためです。決して、栄養を取るための食事ではありません。できれば、栄養がない方が良いのかもしれません。太る心配がないのですから。

エンターテインメントやイベントを楽しむのも良い気分になりたいからです。モノを所有するかしないかは問題ではありません。むしろ、良い気分の記念として商品を購入するのかもしれません。モノよりコトが重要になります。

3.贅沢なサービスには人が必要

顧客のニーズが益々贅沢になると、商品と環境だけでは満足できなくなります。新たな贅沢なサービスが必要になります。

サービスにはいろいろあります。食品スーパーで買い物をする時に、自分で商品をピックアップし、レジに持って行って精算することをセルフサービスと言います。しかし、顧客はサービスされているとは思わないでしょう。あくまで店側の経済合理性を追求したもので、顧客が望むサービスではありません。

食品スーパーは、安い商品を提供することが最大のサービスと考えます。コモディティ商品ですから、顧客も価格が安い方が良いのです。

しかし、非日常の生活シーン、例えば、リゾートのシーンでは日常から離れたいので、モノよりも気分優先になります。コストカットには人件費の削減が必要ですが、贅沢なサービスには人件費をかけることが必要になります。執事やメイドのようなサービスです。他人が自分のために貢献してくれることは、とても嬉しいものです。自分が偉くなった気分にもなれます。

この場合は「ヒト」が重要です。どんなヒトでもいいというわけではありません。商品や売り場環境と同じで、ヒトにもグレードがあるからです。

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