まるでゾンビのような中国が欧米とは違う論理で目指す世界覇権

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世界各国が新型コロナウイルスの感染拡大の対応に追われる中、中国が虎視眈々とその動きを加速させています。沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船が日本の海域に連日侵入するなど、あからさまな行動は目に余ります。そんな中国が欧米とは違う論理で世界覇権を目指していると語るのは、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。自身のメルマガ『j-fashion journal』でさまざまな角度から中国を考察しています。

中国に対する大きな誤解

1.中国は分割される?

中国は広大な国土を持っているので、分割して統治すべきだという意見がある。「中国は分割される」という予言めいた書籍も多い。しかし、中国は分割するどころか、一国二制度の香港を完全に中国に組み入れてしまった。更に、「一帯一路」で各国に融資をして、返済不能になると、鉄道や港湾等の権益を得て拡大している。中国は、世界に「中国」を輸出しているのだ。

中国分割論は完全に誤解である。中国分割論は日本の道州制に似ている。道州制は、行政の効率等を考え、広域の行政区分を設け、自治権を与えるというものだ。

しかし、中国のような独裁国家にとって、人民のサービスの向上や行政の合理化は優先順位が低い。人民へのサービスを向上するために分割統治するのではなく、文化や宗教が異なる人民を一括統治すべく、思想統制を行うという考え方である。

「共産党支配を世界に拡大する」ことを目的としている国家が国内を分割統治する意味はない。中国は分割されない。むしろ、覇権を求め領土の拡大を目指しているのだ。

2.中国は民主化する?

西側諸国は「中国は経済的に貧しいから全体国家を選んだのであり、経済的に豊かになれば、やがて個人の人権意識が芽生え、民主主義を選ぶだろう」と考えていた。

これは民主主義の方が社会主義より進んでいるという信念に基づいた意見である。しかし、中国は経済活動だけに資本主義的なルールを導入し、国家運営は共産党一党独裁を継続しながら、経済成長をなし遂げ、GDPを世界第二位に押し上げた。

中国は民主主義に移行しなくても経済成長が可能であることを証明した。むしろ、民主主義は無駄が多く、非効率的であると考えているだろう。確かに、経済成長だけを考えるならば、人民を統率し、働きアリのように教育した方が有利かもしれない。通常ならば、個人の尊厳や人権が経済に優先されるが、中国はそうではない。

経済活動の目的が人民を豊かにすることではなく、共産党の支配力を高めることなのだから、普通選挙などあってはならないのである。

3.中国は崩壊する?

何十年も前から、「中国経済は崩壊する」あるいは、「中国の政治体制は崩壊する」という書籍が数多く出版されたが、未だに崩壊していない。現在も、米中経済戦争、コロナ禍、洪水や蝗害によって、中国は崩壊まで秒読みに入ったとされているが、本当だろうか。

中国は我々の常識では判断できない。我々は自分の立場で、経済第一に考える癖がついている。損をすることはしないし、採算に合わないこともしない。

しかし、中国は国家としての損得を優先する。一つの企業、一つのビジネスでの損得は関係ない。赤字でも世界に浸透するなら、安価な商品を市場に出す。そして競合他社を追い込み、最終的には買収してしまう。

また、企業間競争でも、競合他社の不満分子を調べ上げ、ハニートラップを仕掛け、情報を聞き出し、工作員にする方が、正面から競争するより安上がりだ。こうして世界各国に浸透し親中勢力は意外に数も多く、根深いのである。

また、世界中で5G、監視カメラ、顔認証、ドローン、スマートグリッド等による高速デジタル通信革命は進行しており、ファーウェイを潰したとしても、中国政府の影響力の強い中国、台湾メーカーや、中国資本に買収された西側諸国のメーカーが代替えになるかもしれない。

中国には西側諸国のコンプライアンスはない。むしろ、マフィアのような行動原理を持っており、マフィアのように世界に浸透している。しかも、中国では、人民が大量に餓死したとしても、政府は崩壊しないのである。

4.中国の世界覇権の野望は消えない!

仮に、中国がアメリカからの制裁に屈したとしよう。中国は自らの非を認め、悔い改めると宣言する。金額はともかく、コロナ禍を招いた隠蔽行為の賠償金も支払う。何人かの官僚は引責辞任する。その代わり、政治体制は変えないし、指導者も変えない。

そして、実際に軍事的行動を控え、笑顔の外交戦略を展開する。アメリカとの貿易も次第に開放され、世界との貿易も復活する。そして、再び、中国は世界の工場として復活する。

3年後か5年後に再び、ウイルス感染症が報告される。今度は中国からではなく、アフリカやイタリアから発生するかもしれない。中国は献身的にウイルス対策外交を展開するだろう。

さて、中国は変わっているだろうか。私は中国の世界覇権の野望は消えないと考えている。5年、10年間、何もなくても、いつか行動を開始するだろう。それが中国共産党なのだ。

編集後記「締めの都々逸」

「日中友好 笑顔で握手 それでも 本心隠す奴」

中国は崩壊するのでしょうか。その問いは、「世界は完全にマフィアを殲滅できるのでしょうか」という問いに等しいと思っています。

暴力と恐怖による統治は、原始的かつ普遍的なものであるだけにやっかいです。また、マフィアは地下に潜ります。本当の身分を隠し、一般企業、一般市民として活動を続けます。そうなると、見分けが着きません。

更に、マフィアの方が、情報収集力、分析力に優れているとしたらどうでしょう。マフィアがデジタル技術を支配しているとしたらどうでしょうか。これは難しいですね。
最終的に中国はそんな感じになるのではないか、と思っています。恐ろしいことです。(坂口昌章)

image by: plavevski / shutterstock

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