アメリカも未だ警戒。なぜ、世界は「日本」を恐れているのか?

 

「天皇 = エンペラー」という翻訳の問題

親日の歴史学者ジェイソン・モーガンさんは、最新刊『歴史バカの壁』の中で、この件について書いています。

「天皇 = エンペラー」という訳が問題なのだと。

アメリカ人にとって「エンペラー」はどういう存在なのでしょうか?「ドイツのカイゼル」というイメージなのだそうです。皆さんご存知のように、ドイツは第1次大戦で、アメリカと戦いました。それで、アメリカ人は、【エンペラー = 独裁者 = アメリカの敵】というイメージをもってしまった。この言葉のせいで、【日本の天皇陛下 = エンペラー =独裁者 = 敵】というイメージになってしまった。

アメリカ政府などは傲慢に「天皇という独裁者に支配される国を痛烈な戦いののちに侵略し、国民を解放することがわれわれには義務づけられている」と思っていたようです。
(p25)

アメリカ人が「ジャパニーズ・エンペラー = ドイツのエンペラー」、つまり「宗教の自由を否定する単なる好戦的な野蛮にすぎない」と誤解釈してしまったことが悲劇的な過ちで、日米の間に計り知れない苦しみや痛みをもたらしてしまいました。
(p26)

天皇、英語ではエンペラー、ロシア語だとイムペラートルといいます。どちらも「皇帝」ことですが、「天皇 = 皇帝 =エンペラー = イムペラートル」。でも、「天皇」と「皇帝」は「イコールだろうか?」と考えると「違う気がする」のは、私だけではないでしょう。何か適切な訳語を考えないといけないですね。

ちなみにジェイソン・モーガンさんの『歴史バカの壁』ですが、「聞いたことがない話だらけ」でとても面白いです。

この本は、ざっくり「日本編」と「アメリカ編」にわかれています。日本編は、いわゆる「保守的」視点で、私たちにはなじみがあるものです。しかし、アメリカ編は、「聞いたことのない話ばかり」になっています。たとえば、

  • リンカーンは独裁者
  • 南北戦争は、共産主義 対 民主主義の戦い
  • そして、共産主義の北部が勝った
  • アメリカ政府が「銃を禁止したい」のは「独裁国家をつくりたい」から
  • アメリカ人が銃をもつのは、「政府から」「自分を」守るため
  • アメリカは社会主義国家である
  • 松岡洋祐は正しかった
  • アメリカの新しい左翼運動「1619年プロジェクト」とは?
  • このプロジェクトで、アメリカは「自虐史観国家」になる
  • アメリカの希望は日本

聞いたことがない話ばかりでしょう?私も、「はじめて聞いた」という話ばかりでした。ジェイソン・モーガンさんは、大変に親日な方。本は、とても読みやすく、初めて聞く話が山盛り。皆さん、是非ともご一読ください。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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