禁煙から15年以内は要注意。徳田医師「喫煙者は爪を診よ」の意味

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がんのように体の中に異常があると、体のまったく別の場所に異変が起きる場合もあるようです。よって、喫煙者などがんのリスクを抱えている人は、自己診断できる身体所見を知っておくことは非常に大切です。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で沖縄在住医師の徳田先生は今回、「ばち指」という肺がん患者に起きやすい指の爪の変化について解説。喫煙者はもちろん、禁煙15年以内の元喫煙者も知っておくべきと呼びかけています。

自己診察によるがんの早期発見。身体所見は体の異変を示すアラーム

体の異常は体の表面にも出てくる。身体所見は体の異変を示すアラームだ。今回も、前回に引き続き、身体所見による病気のみつけ方について紹介する。まずは、実際に私が経験したケースに付いてみてみる。

ある55歳の男性が、私の外来に受診した。若いころからたばこをよく吸っていたという。ジョギングもしていたので、たばこを吸っても大丈夫だと思っていたらしい。約5年前から、息切れが出るようになり、それがだんだんひどくなり、今回病院に訪れたのだ。

男性の病状を慢性閉塞性肺疾患と私は診断した。英語表記の頭文字を並べてCOPDともいう。肺の中の気管支に炎症が起き、細くなることで空気の流れが落ち、肺の奥にある肺胞に空気が溜まり、壊れていく。原因はたばこ。長年ジョギングをして心肺機能の優れた人であっても、長年の喫煙は肺を破壊していくのだ。

たばこの多面的リスクに注意

慢性閉塞性肺疾患すなわちCOPDの患者さんの肺の顕微鏡所見は肺気腫。気管支の奥にある肺胞は、ぶどうの房のような微細な組織。長年たばこを吸うことで、これが破壊されるのだ。

以上の詳細を私が説明すると、男性はたばこを止めることに同意してくれた。肺気腫の進行を抑えるためにも、禁煙は重要である。ただ、一度破壊された肺胞は再生されない。正常の緻密な肺に戻ることは無いのだ。まだ50歳代。たばこさえ吸っていなければ、マラソンもできる年齢。ところが、COPDが進行すると、外出さえままならなくなるのだ。

影響はそれで終わりではない。たばこの発がん作用は強力だ。止めても数年間は発がんのリスクが高く、がんの初期症候について継続的に注意深く診る必要がある。また、動脈硬化症のリスクも高い。脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などだ。がんや動脈硬化症が出現していないか、丁寧な診察が大切となる。

COPDでは太鼓ばち様に変形した爪に注意

数年後の外来で、その男性の指の爪に変化があることに気付いた。指の先が太く、太鼓バチのような形になる「ばち指」という変化だった。これは、肺がんの可能性を考えるべき重要な身体所見の一つだ。

男性は、早期に肺がんがみつかり、肺の部分切除で治癒させることができた。不思議なことに、肺がんを治癒させると、ばち指も徐々に治癒していくことがある。がんは全身の組織に遠隔的影響を与えるのだ。

がんを発症した喫煙者の多くはたばこを止めている。吸い続けると別のがんが発症するリスクが高いからだ。それでも、たばこを止めて15年間は要注意である。それ以降は発がんのリスクは一般の同年齢の人々と同じ程度となり、やっと安心となる。

今回のケースから言えるのは、喫煙者は爪を診よ。そして、ばち指となっていれば、かかりつけ医を受診し、肺の検査を受けるとよい。肺がん検診より、この自己診察が有効である。

【参考】● 禁煙しても15年は要注意

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