全線乗り潰しができない鉄道。「三岐鉄道」を知っていますか?

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東京発着を除いて7月22日からの開始が決まった「GO TO キャンペーン」。感染者数の増加傾向に加えて、除外対象にも不透明な部分があり、ごく少人数で近隣の県への小旅行というのが現実的でオススメできそうです。今回の鉄道・軌道系無料メルマガ『Magazine de Station』では、著者のM.Gさんが、三重県の「三岐鉄道」にまつわる歴史や豆知識を紹介。2つある路線のレール幅が違っている、全線乗り潰しができないなど、珍しいローカル鉄道を旅行プランに組み込んでみてはいかがでしょう。

三岐鉄道~三岐線と北勢線~

いきなりですがクイズです。三重県内を走る鉄道会社で「貨物列車を走らせている鉄道会社」といえば?答えが「JR貨物」だけなら不正解です。「JR貨物と三岐鉄道」と答える必要があります。

三岐鉄道の路線には三重県四日市市の富田駅と同いなべ市の西藤原駅を結ぶ「三岐線」、近鉄富田駅と三岐線の三岐朝明信号場を結ぶ「近鉄連絡線」、三重県桑名市の西桑名駅と同じくいなべ市の阿下喜駅を結ぶ「北勢線」があります。

三岐線についてですが、今でこそ西藤原駅で止まっていますが、もともとは岐阜県不破郡関ケ原町の関ヶ原駅付近までの路線を計画していたことから、三重県の「三」と岐阜県の「岐」で「三岐鉄道」となりました。

藤原岳から産出されるセメント材料(石灰岩)を運ぶために地元有力者のほかに浅野セメント及び小野田セメントが出資しており、現在でも太平洋セメント(浅野セメント→日本セメントと小野田セメント+秩父セメント→秩父小野田が1998年に合併した会社)が大株主になっています。また富田駅と東藤原駅の間に貨物列車も設定されています。

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image by: 継之助 / CC BY-SA

その一方で旅客営業も行っており、本数が多い近鉄富田駅への乗り入れを要望する客が多かったことから近鉄連絡線を設置、現在では旅客列車は全て近鉄富田駅を発着しており、富田駅と三岐朝明信号場の間を走る列車は貨物列車だけとなりました。
※なので「臨時列車でも設定されない限りは全線の乗り潰しができない会社」と言うことができるかと思います。

一方、北勢線についてですが、こちらは近鉄から譲渡された路線、ということになります。北勢鉄道が路線を作った会社で、三重鉄道(現在の四日市あすなろう鉄道及び近鉄湯の山線に該当する路線の会社)とともども第二次世界大戦の戦時中に統合する意味合いで三重交通→昭和40年代になってから鉄道部門だけを独立させて(余談ですが三重交通はバス会社として現在でも存続しています)三重電気鉄道→近鉄に合併されて近鉄の路線となり、近鉄から譲渡されました。

因みに北勢鉄道や三重鉄道が三重交通として統合させられたのに対して三岐鉄道はこの時対象にならなかったわけですが、恐らく「セメントの会社が親会社だったから」ということがあると思います。似たような例としては(岐阜県の例ですみませんが)笠原鉄道と駄知鉄道が東濃鉄道(二代目)として統合させられたのに対して、北恵那鉄道は電力会社(大同電力・のちの関西電力)が親会社だったことで統合をまぬかれたということが挙げられます。
※ただしこちらは現在では東濃鉄道・北恵那鉄道改め北恵那交通の二社とも名鉄の傘下になっているんですけどね。

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