地方に広がる新型コロナ感染。GoToトラベルを即座に中止すべき訳

tsuda20200727
 

以前掲載の「東京除外は悪手。政府が「GoTo」の対象から本当に外すべき人々」では、安倍政権がGoToトラベルについて国民の理解を得るため付加すべき条件等を考察した、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。今回津田さんは自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で、「結果論的にはGoToトラベルは失敗」であるとしてその理由を記すとともに、今後政府が取るべき政策を具体的に提示しています。

新型コロナ感染再拡大

新型コロナ感染拡大で、全国的に新規感染者が増大している。この今後の対応を検討しよう。

新型コロナ感染評価関数を定義するべき

コロナ感染しても、日本人は、知らぬ間に獲得免疫があるので、死なないし広がらないから、経済活動を行うべきであるという評論家や傾向分析だけで楽観論を言う若手評論家が出てきて、大きな影響を与えている。

その影響でGoToトラベルを前倒ししたようである。しかし、その考え方を基盤にしたために、政策評価関数を定義していないようで、分科会で医学者と経済学者の意見を調整する客観的な基盤が存在しないように見える。

現実を見ると、やはり感染拡大と共に、60歳以上への感染が広がり、重症者が増えている。

基礎疾患を持つ人と60歳以上の人への感染を阻止して、経済活動を行うことが必要であるが、この人たちに拡大して重症者が増えたら、再度、GoToトラベルを中止して、それでも拡大するなら緊急事態宣言を出すべきである。その評価基準が見えない。

ということで、政府や分科会でベースとなる戦略的な論理ができていないように見える。

日本が実施している政策は、活動を活発化するダンスと活動を抑えるハンマーの(ダンス&ハンマー)政策であると認識することが必要である。

このため、ダンスをいつ初めて、ハンマーをいつ叩くかということが重要になる。このため、政策評価が重要なのである。

政策評価には、評価関数が必要になる。この評価関数は、コロナ感染死者だけではなく広い関連分野全部での死者数である。

そして、死者数を最小限にすることが、このコロナ対策の政策キーになっているはずだ。

死者数は、新型コロナでの死者と病院ひっ迫により治療できずに亡くなった死者と、景気後退での自殺者であろうと見る。サブ関数が対策出費総額となる。この出費総額はなるべく少なくしたい。対策支出を少なくして、コロナ後の経済的な自由度を確保することである。

この政策の終了は、治療方法が確立したときか、ワクチンが皆に打てる状態になった時点となる。長くて2年と見る。この期間で、どれだけ死者を減らせるかが、政府を評価する基準となる戦いである。他国と比較する戦いではない。

そして、この期間も短くすることである。コロナ・ワクチン1億人分が2,000億円でも、その期間が短縮するなら選択した方が安い。

新型コロナの死者を少なくするには、都市封鎖が有効であるが、反対に景気後退による自殺者が出るので、経済活動をしないといけない。しかし、自殺者を減らす方法は、事業給付金や雇用者給付金という手もある。

新型コロナの死亡者数は、重症者の半分と言われている。病院ひっ迫での死者数も第1波で分かっているはず。重症者は病院に3ケ月いて治るか死ぬかであることも分かっている。中等症患者も病院ひっ迫になるので、中等症者数も重要になる。

これらから、やはり優先するのは、地域での中等症者数&重症者数の限界値を作り、それに達したら、地域での都市封鎖、ロックダウンを行い、それが、複数都市に広がったら、全国的な緊急事態宣言を出すことである。

20代から40代までは免疫力が強いので、死なないので、死者数は増えない。このため、経済活動をしてもらう必要がある。本当は、旅行もして地方に金を落としてもらい、地方の旅館やホテルを潰さないようにしたい。これで対策支出を大きく減らせる。

しかし、地方には60歳以上の人が多くいるので、その人に感染すると地方の医療体制は脆弱であり、すぐに中等症者数&重症者数の限界値に来る。そうしたら、旅行先として閉鎖する。その地域のホテルには、事業継続給付金を出すことである。

県単位、町単位での中等症者数&重症者限界値を決めて、それに達したら、GoToトラベルを中止し、旅行者の受け入れを止めて、そして、病院がひっ迫したら、都市封鎖を行うことである。複数県が、それに達したら、緊急事態宣言の再度の発出をすることである。

2年の間に、これを複数回、繰り返すと見た方が良い。その評価関数と体制を早期に準備するべきである。

複数回の繰り返し規模を小さくするのは、感染者を出すクラスターを丹念に潰し、営業停止命令を出せる法律体系を整えることである。

憲法に国民の安全のためには私権の制限ができるとあり、これを利用して、営業停止できるようにしてほしいものである。また、クラスターの追跡をする保健所の体制も強化が必要である。

現状では、「夜の街」対策が不十分で感染を広げて、その上にGoToトラベルで、与論島のような医療体制の脆弱な地方に感染を広げてしまったという結果になっている。結果論的にはGoToトラベルは失敗であり、緊急事態宣言を出す前に、即座に止めるべきである。

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