不十分なコロナ対策。新宿の「限界集落」団地、戸山ハイツの惨状

2020.07.29
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災害は新型コロナのリスクだけではない。いつ来てもおかしくない東京直下型地震や、今年も熊本県などで深刻な被害が出ている水害のリスクも考えなければならない。

震災に関しては、各棟は震度6強から7クラスでも倒壊しないように耐震化工事を行っているので、避難所に指定されている東戸山小学校に慌てて逃げるより、マンション内に居る、在宅避難のほうが安全な可能性が高い。震災では、高層建築のガラスが割れるなど、頭上からの落下物や、地滑りにも注意しなければならないからだ。

新宿区の地震ハザードマップを見ると、東戸山小学校の南側と東側の崖は、34、35号棟の北西側や、1、2号棟の北側と共に急傾斜地崩壊危険箇所となっている。大久保通りから東戸山小学校に降りる急坂の一角は、土砂災害警戒区域だ。

35号棟と東戸山小学校に至る坂道

35号棟と東戸山小学校に至る坂道

先述したように、東戸山小学校は元は蟹川の河川敷で、周囲の地形は川で削られた深い谷になっている。震災の時には、逃げている途中で、土砂災害に巻き込まれる危険性も考えられる。同小学校に液状化のリスクはない模様だが、万が一を想定したい。

また、大久保小学校は周囲に木造住宅が多く、火災のリスクが懸念される。

ところで34、35号棟の場合、東日本大震災で、共用部の一部に段差ができるなど、地盤の弱さが露呈していて心許ない。上階のベランダの水が、下階に漏れてトラブルになるケースもある。安全な自宅避難を担保するため、さらなる補強が必要と見られる。

谷底の地形に立地する、34、35号棟。一体の建物になっている

谷底の地形に立地する、34、35号棟。一体の建物になっている

水害に関しては、新宿区の洪水ハザードマップを見ると、旧蟹川に沿った、同小学校も含めた低地にある場所は、概ね0.1~0.5mの床下浸水が想定されている。

また、34、35号棟は蟹川に合流する小川とその水源の泉があった場所に隣接して建っていて、0.5~1mの床上浸水が想定される。実際に、昨年の台風15、18号の襲来時には住民が協力して土嚢を積んだが、待機していたエレベーターが水に浸かって使えなくなるトラブルが発生した。現在は未使用時の待機場所が3階に変更された。

34、35号棟の共用部廊下

34、35号棟の共用部廊下

35号棟の1階共用部

35号棟の1階共用部

20年ほど前の豪雨で浸水被害が出たため、棟の外に側溝が造られたが、近年のゲリラ豪雨ではその機能を超えるまさかのケースが起こり得る。

集中豪雨の時には、消失していた川筋が復活することがあり、濁流に飲み込まれると危ない。かつての戸山荘も水害で、江戸時代後期には廃園になっていたのだ。

「災害が起きた時に、避難所に逃げればいいという安直な考えでは、生命を守れないのではないか」と村山氏は訴える。水害の際には、高所に逃げる基本を踏まえたい。

戸山ハイツの新型コロナ対策、震災対策、水害対策ともに十分とは言えない、背景には、行政の危機感の薄さがあるが、団地住民の自治意識が希薄化し、自治会組織が弱まってきたことも大きい。櫛の歯が抜けるように住民が減り、代わって新しい住民も入って来ないわけではないが、3分の1を占める40年以上長く住んでいる人との交流が、進まない面があるのだろう。過疎地の村落と似た事情だ。

今はコロナ禍もあるので、直ちに復活はできないが、かつては自治会で、運動会、利き酒会、お祭りなども活発に開催するなど、確固としたコミュニティがあった。そうした活動もなくなってきている。

晴れた日の戸山公園のベンチには、所在なげに何時間も腰かけている孤独な高齢者を数多く見掛ける。また、コープ戸山店の前の広場には、コープや道向かいの酒販店で購入した缶ビールなどで、昼間から酒盛りをするグループを連日見掛け、新型コロナ感染のリスクもお構いなしに見受けられる。

全般にシャッター街化している、戸山ハイツの商店街

全般にシャッター街化している、戸山ハイツの商店街

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